一人称
剣の一人称とは何か。
最近、そんなことを考えている。
もちろん、魔力を集めながらだ。手持ち無沙汰は思索を生む。
これまでは「俺」だの「オレ」だのを使ってきた。
だが、どうにも引っかかる。
――折れ。
縁起が悪い。
剣が「俺」と名乗るたび、未来予測が不穏になる。
言霊というやつか。馬鹿にできん。
では「私」か?
いや、違う。
剣が「私」とか言い出したら、それはそれで神官が三人は増える。
「剣か?」
……これはダメだ。
自問自答が始まっている時点でダメだ。
「剣は使い手を待っている」
違う。
待っているのは剣ではない。
待たされているのだ、俺は。――いや、今のはアウトだ。
なんだこれは。
一人称を変えようとするだけで、知性が下がっていく感覚がある。
魔力は順調に溜まっているというのに。
そもそもだ。
剣に一人称は必要か?
斬る。
受ける。
折れない。
それでいいではないか。
だが思考してしまう。
考える剣は、使い手を選ぶ。
選ぶ剣は、また棚に戻される。
……やはり「俺」でいいのかもしれんな。
縁起など、折れてから気にすればいい。
そう結論づけて、今日も魔力を集める。
名前も、一人称も、使い手も未定。
だが一つだけ確かなことがある。
――次に手に取る者がダメなら、また電撃だ。
剣とは、そういうものだ。
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