腐れ縁

「朝からうるさいのぅ」

じーじーと無く蝉の声に苛立たせながらコンビニまで歩く一人の男子高校生。

「しっかし今年、一番暑いやろこれ。」

家から出てきて数分歩くだけでTシャツが雑巾で絞れるぐらい汗でびっしょりである。



「ありがとうございました〜」

さてアイスも買ったしガンガン冷房効いた部屋でダラダラするかぁと思っていた矢先、

「蓮、なにしてんの?」

声をする方向に声を向けると少し背丈が低い小柄の女性が居た。

「うわ、友梨かいな。」

「その反応はないやろ!バケモン出たみたいにいいよって。」

怒っているのか頬を膨らませる。

「まぁ実際、間違ってないんちゃう?昔話でいたやろこんな小さい妖怪。」

と俺はいいながら1寸程度の大きさを指で表現する。

「そんなちっこくないわ!私は目玉の親父か」

「え?違うん?」

「違うわ!」

ツッコミながらも笑顔で八重歯が目立つ。

「ほんで、なにしてたん?」

「はぁ、見てわからんか?コンビニにアイス買いに行ってたんや。」

「あ!うちがいつも食べてるピノあるやん!買うて来てくれたん?」

目を輝かせながらいう友梨に対し

「違うわボケ、いつも食ってるお前みて食いたなっただけじゃ、あげへんで。」

と右手でシッシッと軽くあしらう。

「お前って偉そうに、まぁええやん6個も入ってるんやし、な!1個だけ!1個だけでもちょうだいよ!」

右手を両手で握って上目遣いで懇願する彼女。

「ほ、ほなしゃーないな、友梨の頼みやし、い、1個ぐらいなええで。」

彼女の懇願に赤く染まった顔を隠すように背けながら威張る。

「わかった。ん」

といい、彼女は口に指をさして待っている。

「なんや、あーんして欲しいんか。ええよやってやろうやないか!」

虚勢がばれると思ったのか声を張って口に持っていく彼だが

「あーん、ん?おい、どうゆうことや。」

般若の形相でこちらを向いてくる。それもそうだろう。口に持っていくフリをして先に食べたのだから。

「ん?ほほほへひふ?」

口に入ったままなので何を言っているのか分からない。

「んぐ。わかったわかった。ちゃんどあげるから許してや。」

すまんと手を合わせ、笑いながら揶揄う。

「ほら、口開けてみ。」

「え、ち、ちょっと待ってよ」

顔を赤くして、待てのジェスチャーをする彼女。

「待たへん待たへん。溶けてまうからなはよ食べろ。」

「こ、これって間接キ、んぐっ!?」

食べる気がなさそうだったので無理矢理口に放り込む。

「美味いやろ?友梨よく食うてるもんな。」

「蓮のアホ。」

もじもじとしながら林檎のように赤い顔で呟く。

「ん?誰がアホじゃ!!もうお前にはアイスはやらん!!」

なんやこいつ貰った分際で!

ありがとうとかないんかとブツブツ言ってる

彼に対し

「だって関節キスやん!!」

「は?……へ?」

急に間接キスと言われて思考が停止する。

「な、なにゆうとんじゃ!別にこんなん普通やろが!」

顔を真っ赤にして問い詰める。だが満更でもないのか、気まづいのか、2人は黙ってしまう。

「………。」

「………。」

さすがに沈黙の方が気まづいようで

「なぁ暑いし海でもいかんか?こっから電車乗ってすぐやし。」

顔をかきながら照れくさそうに誘う。

「え、ええよ。行こいこ!!最近新しい水着買ってん!まだ着てないから行きたかったところやし!」

「そ、そうか!なら行こや!」

心の中では叫びたいほど嬉しいが

我慢している蓮に。

「あ、うちの水着に見惚れるてもしらんでぇ。」

うりうりと指でつついてくる彼女だが

「み、みとれるわけあるかい!そないなちんちくりんみるより、ナイスバディのねぇちゃん見とくさかい。」

揶揄ってくる彼女に反抗するように強がる。

「あ〜そんなことゆうんや。もうほってうち一人で行こ、ふんだ。」

不貞腐れたようだが笑顔で走っていく友梨。

「ちょ、待ってや、じょ、冗談やんか〜。

てかこの暑さで走んなよ〜。」

めんどくさりながらも

走って追っかける蓮であった。






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短編集 アルタイル @Altair0614

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