第3話 天使、知恵をしぼる

 罠といえども、どうという小細工の利いた罠でもない。

 太枝を縄でたわませてスネアを作り、トリガーとなる踏み板にセットして落ち葉で隠しておくのだ。その踏み板に片足を乗せた者が、スネアにくるぶしを取られ、たわんだ太枝が張り戻るバネの作用で樹上に吊り下げられるのである。


 そんな古風にして簡素なトラップにまんまと足をすくわれた天使であるが、今はとにもかくにも、独力ではいかんともしがたいこの罠を、とりあえず早急に解除ほしいと切実に乞いたいところだ。

 悪魔に頼むこと不本意ながらもほかに手段がないので、その旨を悪魔に懇願する。すると、悪魔からは以下のような要求をうながされるのだった。


「では、憑依できる人間をくれるならば」


 罠を外す代わりに人の子を差し出せという交換条件、いわゆるに契約である。

 悪魔との契約なんぞ、つかわしめともあろうエンジェルが首肯していかがなるものか。天使は、すぐさまにいぶかしがって眉根を寄せる。


 したらば悪魔が「嫌なら外さん」と腕を組んで脅迫するので、いずれの道に転ぶか進路選択に迷うというものである。

 しかしながら、悪魔が提案した悪魔のようなその取り引き、人間を犠牲にしようなんざ心優しい天使にはとても呑み込めない。自己のなりふりはかまわぬくせして、話題が守るべき人間ともなれば父なる神よりそそがれし我が心魂のアガペーがうずく。


「あ、じゃあ、こうしようよ。悪魔さん!」


 博愛をたぎらせる天使は、ほどなくして名案を思いついたようだ。

 右手の突っ込んだポケットをまさぐるに、とある食べ物を取り出して悪魔に提供したのである。


「知恵の実と交換でどう?」

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