第2話 悪魔、天使をこばむ
天使にとっては大迷惑である。
三日前、散歩がてらに、エデンからルンルン気分で下界へ降臨してきたところ、このようなさまになって出鼻をくじかれた。三日間、誰が仕掛けたともわからぬ罠にひっかかったままである。
しかし、この日になってようやく、犯人が現れたのである。
犯人は黄昏時を過ぎた時刻に、遠方の三叉路からニヤケ顔でこちらに近づいてきた。
不気味なこと極まりないが、人間だろうか。
目を凝らしてみると、犯人は大柄の巨漢である。
恐怖を覚えること極まりないが、本当に人間だろうか。
犯人が目の前までやってきた。
頭に黒いツノが生えている。そして、長い牙と長い爪を持っている。
こやつは、悪魔である。
悪魔が悪魔らしからぬ人間くさい罠を仕掛けて、天使はそれにまんまとひっかかったのである。
悪魔のほうも悪魔のほうで、まさか天使がかかるとは思ってもみなかったようだ。しばらくその場に呆然とたたずんで、さてはてどうしたものかと言わんばかりにうなじを掻いている。
この悪魔、推測するに、半人前の力足らずで常食の人間に憑依できず、誰でもよかれと自暴自棄になってこげな罠を敷いたのであろう。ようは、霊力不足の腹ペコ状態で、みずからの憑くに相応した人間を求めていたわけだ。
だが、敷かれた罠をホイホイと食ったのは、悪魔の意向にそぐわずマヌケな天使であったのだから、なにげとなしにめんぼくない。
「憑きたいの?」
いかにも憑依するかいなか悩んでいる悪魔へ、天使みずから話しかけてみる。
すると、悪魔からは皮肉な返答が投げられた。
「こんなアンポンタンに憑きたくない」
ごもっともであろう。
三日間、自力でトラップの解体にも挑戦せず、ただ一人黙々と他力本願に任せていたような粗忽者である。それこそ、ていたらくであろう。
だが天使は、悪魔の意地悪な一言にふてくされたようだ。
「罠にひっかかるやつ、たいがいアンポンタンだと思うよ」
天使は、そのように言い返した。さも自分は少なくともアンポンタンではないとのたまうがごとく、まことなにさまのつもりだか。
さすれば、悪魔からは、的確な即答が容赦なく浴びせられるのだった。
「神の使いが言う言葉じゃないと思うよ」
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