第4話 蹂躙
バイクの男は自分の後方から迫ってくる奏に向けて、反射的にスキルを使う。
「うわぁっ!?」
男が使用したスキルは手のひらから風を生み出すスキル。
先ほどからずっと2人に向けて撃ち出していた火球の砲台役を務めていた。
このスキルは2人を追い詰めるための急造のスキルではなく、男が対戦時によく使用するスキル。
よって男は反射的に手を伸ばし、向かってくる奏から距離を取るためにスキルを全開で行使する。
局所的に風速にして40m/s近い暴風域が男の目の前で顕現する。
奏は何の抵抗もなく吹き飛ばされ、離れていく。
「た…助かった…?」
男が安堵のタメ息を吐く直前、男の体が衝撃で吹っ飛ぶ。
「あえっ…?」
そしていつの間にか男の体へとワイヤーをくっ付けた奏が、ワイヤーを巻き取り接近。
そして男は訳も分からぬまま、奏がスキルによって出した斧によって首を断たれデッドする。
その様子を見ていた、そこそこ対戦に力を入れていた襲撃者の一人であるレンは奏の行動に戦慄する。
(ま、まじか…あれ狙ってやったのか…?)
レンが見ていた一部始終はこうだ。
風使いの男が奏に向けて暴風を展開。
暴風によって発生した力は男が乗っていたバイクを急加速させる。
そしてタイヤとボディの間へと差し込まれるように設置されたワイヤーへとバイクが突っ込み、バランスを崩し男を空中へと吹き飛ばす。
そして吹き飛ばされずそのままの速度で突っ込む奏が手元でスキル変更の作業をしながら地面へと降り立ち、正確にワイヤーを男へと繋ぎ、手元から出した斧で撃墜する。
つまり、奏が吹っ飛んで距離が出来たのではなく、男がバイクごと加速して奏のトラップへと引っ掛かったが、正解である。
(多分アイツのスキルはワイヤーと圧力の減退か無効化の2つだったはず、恐らく圧力のスキルは俺達の行動を見ていて即興で作ったスキル。)
レンは男を殺した後、悠々とワイヤーを展開し、その上に立つ奏を見て戦闘準備をする。
(即興で作ったスキルをあそこまで使いこなすとか………間違いなくSAWの影響を受けた格上だな。)
レンの間違いは2つ。
まずは奏の風圧を0にするスキルが即興だと考えたこと。
もう一つは、
レンは敵に対応するため、自身のスキルである炎を作り出すスキルと操るスキルを起動しようとする。
その様子を眺めていた奏は、斧を投げつけレンへと攻撃をする。
「っ!?…効かねぇな!!」
レンが炎を出すことで斧を消し飛ばした瞬間、男が展開した暴風域へと炎が侵入し爆炎をもたらし、残ったあと一人の仲間を巻き込んで焼き殺す。
「なっ!?」
(これが狙いか!?)
レンが再び驚愕の感情に包まれた時、暴風域が効果時間を終了し消え去る。
そして同時に風によってたわんでいた、奏が最初に乗ったワイヤーがたわみを引き戻す。
その瞬間、奏はワイヤーの接続を片方だけ解除する。
ワイヤーはその凄まじい力をもって、疑似的な鞭となってレンを撃ち抜く。
「ごあぁ!?」
もう一つの間違いは、
体は吹っ飛び、奏の方へと向かってくる。
レンのかろうじて見えた光景は、奏がタイミングよく斧を振り下ろす瞬間だった。
(ばっけ…もんがぁ!?)
そのまま頭を唐竹割にされた男はデッドする。
残ったのは無傷の奏と固まっているVDiverの二人だけだった。
男が戦っている相手が影響を受けたものではなく、SAW自身であったことである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます