第2話 サイバーパンクな北
奏は磁力を用いて、荒廃しながらもネオンの光で煌めく都市を駆け回る。
「ほっ……」
弾いて、留まり、行きたい方へと体勢を整え、
「よし。」
体を引き寄せる。
奏は高速で都市を駆け回りながらも、自分が新たに90点まで習熟できるスキルを逃さないように、都市を歩く人々や自身と同じように空中や地上を高速で駆け回る人々を深く観察していた。
そしてしばらく、移動を続けていると
「!、ここで都市は終わりなのか…」
後数百メートルも進めば都市から荒野へと姿を変えるマップ。
ここから果てしない荒野と断続して存在する都市部が続くこのマップ。
踏み入れた時に表示されたマップ名は『Cyberpunk of the North』。
世界の名は『Quadra WORLD』。
「安直な名だな…」
奏は呟きながら、今のスキルを破棄し新たなスキルを形成する。
ASがダイバーへと与えるスキル保有限界は2つ。
よって奏は先ほどまで作った磁力による移動方法から、『ワイヤーを伸ばして巻き取る』と『自身にかかる風圧を0にする』という2つの能力を形成。
そして破棄する直前に限界まで吹っ飛ばした体が都市と荒野の境界線を越える瞬間、ワイヤーを廃退した瓦礫へと伸ばして巻き取り、風圧を0にすることで限界まで加速、速度を維持する。
それは超上位互換版のブランコ飛び降りのような
軌道を描く。
最下点で足を振り上げ、最上点で一回バク宙をすることで姿勢を整え、次のワイヤーを伸ばす場所を探す。
後はその繰り返し。
都市部と比べ、人口密度は雲泥の差であり、奏は次の都市へと早期に着くため、限界まで速度を上げて移動していた。
この鯖は中規模程度のサーバーであり、同時アクセス数の平均は万を超える。
「ほんの半世紀前はこんなサーバーは大企業が運営するようなものだったらしいが……技術の革新は凄まじいな。」
そして最初の都市ファストアの次、マップ上で北北西の方角にある都市セカンドイに向けて進む奏。
「やっぱりここの鯖主、名前適当だな?」
暇なので独り言や考え事をしながら移動していると、
「ヤバいヤバいヤバい!?早く逃げてぇ!?」
「うっせー!オレの速度限界はここなんだよ!」
「なんでそんなに遅いの!?」
「じゃあテメェが移動スキル使えよ!」
「無理!」
「だろうな!」
下からお互いを罵り合う声が聞こえた。
奏はその様子を声を聞く前から見ていたが、よくあるサーバーの敵に揉まれる初心者だと思い、無視しようとしていた。
しかし、あまりにも迫真すぎる声に思わずその方向を見てしまう。
バイクを運転するツリ目で黒髪赤眼の毛先が跳ねているロングヘアで装飾過多な服の女性が運転するバギー、そしてそれに同乗しミニガンを肩にかけ、金髪碧眼のシニヨンと呼ばれる髪型をしている、これまた装飾過多な服の女性がミニガンを後方へとぶっ放しまくってる光景が広がっていた。
そしてその後方には、
「野郎ども!オリヴィアちゃんとエヴァちゃんだ!必ず捕まえてサインをもらうぞ!!」
「「「「うおー!!」」」」
「……何だあれ…」
いわゆる世紀末な恰好をしてサンドバイクに乗る男どもが雄叫びの声を上げていた。
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