第2ページ 山の上のUFO

(夏休みのある日、僕らは凄いものに出会った!)


「あっ……!」


 森が多い山の中、そこにカメラを持った2人の少年たちが夜空を見ると、でかい円盤が光っているのが見えた。


 するとその円盤から、何かが降りてくる。逆光が強く、人型ということ以外が分からなかった。


 少年たちは草むらの中に急いで隠れる。


「なんだこりゃ……! なんだこりゃ!」


「│┌┥╂┯┸├┠━━━━┯┥├┥├┠┰」


 何かを話しているが、宇宙語なのか、何を話しているか分からない。


 そうして見ていると何か近くの祠を開けて、何かを落とした。



「……暇だ!」


「暇だねぇ……」


 あの歩道橋の依頼から1ヶ月が経ったが、全く依頼人が来ず、暇な日々が続いた。


「全く暇で暇でやなこった」


「あーっ! また勝手にお菓子食べやがって!」


 戸棚から隠していたお菓子をいつの間にか取り出していた。


「あんな所に置いてるお前が悪い……!」


「なんだとォ!」


 説教が始まるその時、インターホンが鳴った。


「……はいはーい! 今行きまーす!」


 事務所の扉を開け下を向くと、メガネの細身の少年とスポーツ刈りのメガネの子とは真逆の体型をした2人の少年がいた。


「なぁ……! ここって、UMA捜索してくれんだろ? だったら、俺らが見つけた宇宙人を見つけてくれ!」


「まっ……まぁそれじゃあ分からないから、詳しく依頼聞きたいし、中に入って……?」


 ソファーに座ると、少年達に自分の名刺を渡した。


「僕の名前は除霊師のアルゴ! こっちの子は未怪物コレクターのノイマン! 君たちの名前はなんて?」


「俺の名前は雲谷野幌もやのほろ


 メガネをかけた少年がそういうと、もうひとりのスポーツ刈りの少年も自分の名前を話し始める。


「俺の名前は杉山大悟すぎやまたいご


「……じゃあ2人は、なんでここに来たんだい?」


「それは……! 僕ら! UFOを見たんだ!」


「UFOォ!?」


 2人は驚きのあまり声が揃った。


「UFOってあの? でもどうやって?」


「……あれは、1週間前……あの山の祠を宇宙人が開けてたんだ!」


 2人は立ち上がると準備をし始め、少年たちの手を引く。


「それは!? どこで!?」


「あの山……!」


 事務所の窓から見える一見普通の山を指さした。


「ノイマン!」


「あぁ! わかってる!」


 そう言って彼らが指さしたあの山へ向かって行った。



 立ち入り禁止の看板が掛けられた網の柵に空いた穴をくぐり抜ける。


「……ここだよ! ここ!」


 立ち止まった所は、そこだけ雑草が生えておらず、やけに綺麗な状態で手入れがしっかりされていた。


「どう……? ノイマン?」


 ただその地面を見るとUFOによって刈られた後ではなく、草刈機で刈られたような跡があった。


「痕跡は無さそうだな……」


 4人は周りの草むらをかき分け、その手がかりを捜索し始める。


 アルゴの方は、その先にある小川の方に幌と行ったが、石と川が有るだけで何も無かった。


「……なんにも、無さそうだね……」


 2人が手がかりが無くて俯いた時、何かの破片が足元にあった。


「何……? これ……?」


 幌はそれを魅入られ、拾うとアルゴに見せる。


 アルゴはそれを見せられて顔が青ざめると、その欠片を少年から奪い取る。


「これ! 何処で!」


「足元に落ちてたんだ!」


 今まで見た事ないアルゴのその声に幌の心臓はバクバクと鳴っていた。


 そのまま辺りを見ると、同じような破片が石の隙間に落ちているのがわかった。


「……まさか……!」



 ノイマン達はアルゴ達とは反対側の草むらを捜索していた。


「……なぁ、お前……その宇宙人が開けた祠ってのはコレか?」


 その草むらにポツンと置いてある、古い祠に指を指す。


「うん……宇宙人が開けたのはその祠……」


 その祠には錆びた南京錠がかかっていたが、祠の扉と共に壊れていた。


「ノイマン!」


 アルゴは慌ててノイマンの方へ向かっていった。


「アルゴ……! 2人を連れて逃げろ!」


 祠を中心に結界が広がっていき、空が赤黒くなっていき、周りが海に変わっていく。


 祠から、何か天と地を繋ぐ筒のようなものが出てくると、周りからも同じような筒が出てくる。


「……出てきたな……! シチ……!」


 シチの周りから黒いぼんやりとして手が出てくると唖然としている少年2人を捕まえようとしてくる。


「テレポート!」


 アルゴは両手に御札を持ちその2人の手を掴むと、御札は燃えた。


「ここは……!」


 目を瞑って居たため、どうやって行ったがよう分からなかったが、3人はあの事務所に帰ってきていた。


「俺らは……どうやって帰ってきたんだ……?」


「幽体離脱の逆バージョンだよ……結界内にいる時にしか使えないけど……」


 アルゴはバタッと倒れてしまった。



「あのバカ……! 無茶しやがってよォ……!」


 シチから出る手がノイマンを襲うが、次々躱していく。


 コレクションブックを影から取り出すと、それを開く。


「コレクションブック! 1Pページ! 稲荷!」


 本から狐が出てきて、向かってくる手を噛みちぎるがそれを上回るほとの無数の手が出てくる。


 栞を本に挟むと、次のページを開いた。


「……チッ! コレクションブック! 2Pページ! 大蛇!」


 本から壺が出てくると、そのツボから雑居ビルとビルと同じサイズの大蛇が出てくる。


 向かってくる手を丸呑みするが、すぐに破裂してしまって、本に戻っていく。


「ヤめなさイ……! 愚カな子ヨ……!」


「なんだ……? テメー……!」


「私ハたダ……子供ガほしイだケです……」


「うるせーなおめぇはよォ……! そうやって言って、子供を殺すんだろ……!」


「何ゼ……? 分からナイノですカ……! 私タチのネガイが……!」


 無数のては赤黒く染まり、猛スピードでノイマンの方へ向かってくる。


 稲荷はその手を噛みちぎろうとするが、その手の波に揉まれ、身体がボロボロになっていき、本に戻って行った。


「コレクションブック! 11Pページ! 大百足!」


 無数の手を、ムカデの手で抑えるが、次々もぎ取っていき、どんどんと腕がノイマンの方へ向かってくる。


「……ッ!」


 体を掴まれ、結界内のハリボテの海に叩きつけられる。


 力強く押さえつけられて、立てなくなる。


「……お前、沖縄のやろーだろうが……! なんでこんな遠く離れた所にいんだよ……?」


「私タチのナガ広がリ、モウ子供が来なクなったのでス……そんなトき、私の事ヲここまデハコンデくれタ方がいるんデス……!」


「知らねーよ……! さっさと沖縄に帰って孤独死でもしとけバカヤロー……!」


 空を見るとでかい顔がノイマンの事を見て微笑んでいた。


「アナタは……よく見ると、私の子供ニシタいクらい可愛い子……! キマショウ……! 来まショウ……? 可愛イ子……!」


 複数の声が聞こえ、その無数の手でノイマンの事を闇へ連れ去ろうとした時、本が光り出す。


「俺はな……一つだけ、ピンチの時にしか使わねー、そんなPページがあんだよ……!」


 そのPページを開くと、黒い墨で描かれた逆五芒星が見開き1Pページに渡って書かれていた。


「コレクションブック……!4Pページ! 黒魔術!」


 その逆五芒星は黒く輝き出し、炎に包まれると、細く爪の長い手がそこから出てくる。


「この黒魔術から出てくる悪魔は、完全ランダム……! もしかしたら傍若無人のバケモンかも知れねーし、言う事聞くバケモンかもしれない! ギャンブルだよ! ギャンブル!」


 その悪魔の身体は太く筋肉が厚いが、手足の肉は細く、今にも骨が見えそうな状態。顔は牛の角と馬の顔を合わせたような、そんな悪魔が出てくる。


「出たな……! 悪魔……!」


 午後17時32分・結界内、シチを人柱に巻き込む形で悪魔バフォメット、完全召喚。


「鬘倥>繧定ィ?縺」


「蛟偵○窶ヲ窶ヲ!」


 バフォメットはノイマンの事を掴む手を断ち切ると空にあるシチの顔に向かっていく。


 無数の手で顔を塞いで守ろうとするが、どんどん貫通していき、顔面を破壊した。


「螂醍エ?ョ溯。娯?ヲ窶ヲ」


 結界はどんどん壊れていき、宙に舞ったノイマンの身体が落ちていく。


「コレクションブック……! 10Pページ……! 化け猫……!」


「ナンダ!」


 地面に化け猫が出てくると、その飛び出た腹をクッション代わりにして、落下の衝撃を吸収した。


「あんがとさん」


 化け猫はそのまま無言で逃げようとするが、本の中に吸い込まれていく。


「さてと……成仏する前に……」


 本の中にシチの黒い影が吸い込まれていく。


「コレクションブック12Pページシチ! 登録完了……!」




「なぁ……! お前! この人目ぇ覚ますのかよ!」


 事務所に戻ると、あの少年2人が必死に連れていったのか、ベットで気絶していた。


「大丈夫だ……!」



「ここは……?」


「起きたな……」


 起きるとノイマンは目の前でポテチを食べていた。


 ずっとお菓子を食べていたのか、床にそのゴミが散らばっている。


 自分のスマホを見ると、日付は次の日になっていて、机の上には昨日の依頼人が書いたであろう手紙が置かれていた。


「なぁ……ノイマン……! 今回の件、ポゼストが……!」


 アルゴは拳を握りしめると、ノイマンの方を向いた。


「あぁ……! こんな事出来んのは俺か此奴らしかいねー……!」


 彼らはポゼストに関わった事が、これからの人生が変わる出来事になる。

 その事を彼らはまだ知らなかった……

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未怪物コレクターノイマン あいうえお @mangakakitai

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