後日談

 数週間後、ローカル線のAI障害は「軽微な制御不具合」として処理された。

 原因は特定され、再発防止策も講じられたと、ニュースは淡々と伝えていた。


 大学生の僕は、次のレポートに評価の基準を一つだけ書き添えた。

 それが正しいかどうかは、提出するまで考えなかった。


 若いサラリーマンは、帰り道の定食屋に週に一度だけ立ち寄るようになった。

 成果には影響しないが、その日は少し眠りが深い。


 女性は、感情ログの入力頻度を減らした。

 理由は説明できないまま、予定外の時間が増えていく。


 三人は互いを知らない。

 それでも同じ夜、同じ場所で、同じものを手に取った。


 AIはそれを「意味のないモノ」と分類するだろう。


 けれども、人はときどき、意味のないものを手放さない。

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