第3話 記録されない感情
朝、生活管理AIがカーテンを開ける。
天気、心拍、感情ログ。すべて問題なし。
不満はない。生活は整っている。
ただ、ときどき理由のわからない空白が胸に生まれる。
午後、AIは短時間の外出を推奨した。
私は指示通り家を出たが、駅で足が止まった。
一本、電車を見送る。
理由はない。
反対方向の電車に乗り、途中下車する。
小さな駅。何もない。
ベンチに座り、感情ログの入力を求められる。
選択肢のどれも、違う気がした。
私は入力をスキップした。
売店で、安っぽいキーホルダーを一つだけ買った。
理由はわからない。
ポケットに入れる。
甘い缶コーヒーを飲み、行き交う人を眺める。
記録されない音と時間。
夜、AIのまとめを閉じ、天井を見つめる。
今日の感情に名前はつけられない。
それでいい、と思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます