街道レーサー卒業式

速く、ただ速く峠を攻める。カタナはよく曲がった、だがZZRはカタナに比べてアンダー気味でホイールベースが長い分少しやりずらい。


ーーーー「アイツこんなんで俺に着いてきてやがったのかよ、、アイツの方が絶対速かった。」


そう口に出る、ヘアピンひとつひとつでタイムを確実に落としてる、後ろからCBR乗りのカス共が煽ってきやがる、カタナだったら目じゃなかった。


ーーーー「速すぎる、なんだ前のやつ」

前にヤツの影が陽炎のように見え、いや違う。陽炎なんかじゃない、実体だ間違いなく。


テールライトを追いかける、でもコーナー抜ける度置いていかれる。コーナリングで間違いなく60いや70は出てるかもしれない。コーナリングは間違いなくこっちの方が速い、が立ち上がりで差がつく。


ーーーー頭にきた、本気で

そこがミスだった。フロントが沈み込む、リアの設置感がない、ガードレールが目の前に見える。


「はぁ、事故ったか」

俺はどれ程寝ていただろうか、俺はそこで気が付いた、ガードレールに突っ込んで単独事故だった、付き添いで女性が居たそうだ、そこまでしか知らされなかった。


幸い事故の後遺症もなく、3週間ほどで退院できた、ZZRは完全に潰れていた修復出来ないほど。まるで俺を守るように、


ーーーー「街道レーサーは廃業だな、ここから俺は鈴鹿のチームに行く」

12月、雪は滅多に降らない、小倉の街。しかし今年は雪が降った。俺はアイツの墓参りをしに行く、やつのお陰で俺は生きてる。そう感じたからだ。


アイツの墓参り、これが俺の街道レーサーの卒業式だったのかもしれない。





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