アイツにサヨナラ

峠もダウンヒルに差し掛かった、やつのテールライトを追う。俺は追う、金属同士がぶつかった鈍い音が鳴る


ーーーー「転倒事故や、あのバカ前に出るつもりか?バカ止まれ下手クソ!!!」


ーーーー「ここでしか行けない!センターラインをはみ出してでも抜いてやる!!」


ZZRがセンターラインをはみ出しオレのカタナを抜き、転倒事故を避けて前に行く。だが奴は帰ってこなかった。


対向車との正面衝突、即死だったらしい。

俺はカタナを手放した、四百から五百まで

ボアアップさせた俺の愛車を。

俺らはなぜ走るのか分からねぇ、ただひとつ言えることがあるとするなら、何かを認めて欲しくて走るんだろう。やつも同じだったはずさ、



ーーー「銀杏が黄色い、臭い匂いがするな」

もうあれからかなり経った頃、ふと俺は地元のバイク屋に寄った。何かに誘われるように、


"事故車 ZZR250改ネイキッド仕様 公認付き"


見た瞬間奴のだと思った、いや確信した。

ーーーー「おっさんこれいくら?」

何故か店主に聞いていた。ヤツのバイクが名前もしれねぇやつに乗られるのに強い抵抗を感じたからだ。

「フレーム歪んでるのを無理やり直したから5万でどうだ?」

俺は妹の誕生日プレゼントの為に残していた5万を出していつの間にか買っていた。でも俺はこれでいい。


何故か奴が乗っていた時無理しているようなエンジン音だったが俺が跨ったら余裕のある、そんな音に感じた。


そんなことを思いバイクに乗り帰路に着く。

担当地区が同じだったんで奴と同じナンバー

"北九州 て 1 16ー536"が俺のナンバーにやった。


ヤツの事故の原因は俺なのは分かってる。

だからその業を背負うつもりでバイクに跨る、


右手首を捻るとゆっくりと、しかし確実に前に進み出す。まるで俺の人生のように、


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