第4話 拡散する光の声
エリーのデビュー準備は加速し、プロジェクトチームも本格的に動き始めていた。
初期ミーティングから数日、裏側は慌ただしくなりつつあった。
折原は整備士であったが、今回のプロジェクトで広報チームとの連携も任され、これまで扱ったことのない量のメールとエンタメ情報の処理に翻弄されていた。
エリーは代表曲を一曲収録した。彼女の歌声は、見えない光の波に乗って街を駆けた。
情報の海で、エリーという名が静かに拡散していく。まだ、誰もその姿を知らない。
エリーは折原のマンションと同じフロアに住むことになった。
だが、カプセルが折原の部屋にあるため、ほとんどの時間を彼の部屋で過ごしていた。
深夜。折原が家に帰ると、エリーは当たり前のようにソファに座っていた。
「おかえりなさい!」
エリーは嬉しそうに折原に飛びつく。彼もこの歓迎の仕方に、もう慣れはじめていた。
「ねぇ! フォロワーがついに10万人超えたよ!」
「……そうですか。」
短い返事。でも、その声はどこか柔らかかった。エリーはその小さな変化に気づき、嬉しそうに笑った。
「次は人を集めてコンサートだったよね? エリーお披露目だよね!?」
エリーが自身のSNSの画面をアージェルに見せる。確かにフォロワーは目標を達していた。
「……予想より早かったですね。」
カーテンの隙間から、金色の月が夜を照らしていた。折原はふと、その光の色が彼女の髪に似ていると思った。
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光の記憶~感情を忘れた世界で、歌うアンドロイドの修理係になった~ 明見朋夜 @aketomo_nya
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