第7話

 鷹野はおもむろに「ごめん」と葉山に頭を下げた。謝罪は、僕が鷹野と取引したあと、鷹野が葉山を遠ざけるような連絡をしたことだった。僕が死んだ日に葉山が教室を練り歩いていたのは、遠ざけられたことにショックを受け、鷹野に直接会って話そうとしたためであった。

 あのとき、「じゃあ鷹野くんも私のこと、いらないんだ」と葉山が言ったことを思い出す。どんな関係であれ、鷹野の存在は葉山にとっての数少ない居場所だったのだろう。

 謝罪に対して、てっきり元通りの関係に戻るかと思いきや、葉山はそうせず、鷹野の謝罪を快く受け入れて、そそくさと去ろうとした。鷹野も期待していた反応とは違ったのだろう。「薫がいないとダメなんだ」と言って葉山に迫った。その言葉を聞いて僕は鷹野が本心ではないのがわかった。なぜなら鷹野は女を金を集めるための手段としかしていないし、葉山以外にも当てがあるのだ。

 鷹野は葉山の頭を抱き寄せ、耳元で「薫も僕がいないとダメだろう」と囁いた。鷹野は葉山の心を利用しようとしている。俺のパンチを食らわせてやろう、と構えた。そのとき、鷹野の身体はぶっ飛んだ―。

 葉山の拳によって。葉山は圧のある笑顔で「二度と私に近づかないでくれるかな」と鷹野に言い放って、走り去った。後を追いかけると、葉山は拳が出るとは自分でも驚いたそうだ。「私もパンチ出ちゃった」と葉山が言うと、なんだか通じ合った気がして、また二人で笑った。

 その日の帰りのホームルーム、僕の葬儀が明日の昼間に執り行われることが決まったと連絡があった。

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