第4話 鏡合わせの孤独、あるいは「先客」

「ホログラフィック・スクリーン」に流れるデータ配列を指先でなぞっていた時、その指が、自分のものではない「別の干渉」と衝突した。

 静止した時間の地層、その「2024年の東京」の断面に、九条以外の誰かがアクセスし、情報を読み取った。

 異星の観測者「リ・ア」との邂逅

 九条が振り返ると、そこには人間とは似ても似つかない、しかし知性の光を宿した「光の幾何学体」のような存在が浮かんでいる。

  彼(あるいはそれ)は、九条と同じく、自らの宇宙の「フラスコ(3次元)」を突き抜け、この高次元の回廊へと辿り着いた、別の銀河の観測者でした。

「人間ではない……。だが、私と同じように『外側』を求めた者が他にもいたのか」

 リ・アの伝達: 彼女(便宜上の呼称)は、音ではなく「直接的な概念の投影」で九条に語りかけます。「孤独な原始人よ。君の種族がここまで来るのは、計算上の予定より数万年早い」

 「観測者のギルド」と情報の均衡

 リ・アとの対話を通じて、九条はこの場所が自分一人のための空間ではないことを知る。

 ここには、何十もの異なる宇宙(シミュレーション)から「卒業」した観測者たちが集まる、いわば「世界の屋上」のような場所が存在していました。


 しかし、彼らは神ではありません。彼らもまた、さらに上位の次元から「何が起こるか」を観察されている被造物に過ぎないという疑念を共有している。


 突きつけられる残酷な事実

 リ・アは、九条が愛する家族のデータを書き換えようとしていることを瞬時に見抜きます。そして、冷徹な真実を告げた。


「あなたがその『一画素』を書き換えれば、私たちが守っている他の宇宙の『銀河ひとつ』が、ノイズとして消去される。この高次元ラボの全情報量は一定だ。誰かを救うためのビットは、誰かの存在を消すことでしか捻出できない。」



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