第3話 似て非なる世界

私は『図書館』という所にいる。

情報収集するとは言ったが、本が充実している。

何万…いや百万は余裕で越えてるか?

しかし、私は勘が鋭い。

何となく、何を読めば良いか分かってしまうのである。


透李は時間がかかるだろうと、時間を潰してまた来てくれるそうだ。

あいつの親切心はどこから湧くんだ?


――――――――――。


だいぶこの世界について知れた。

ここは『地球』という星で、日本という国。

私の言葉は、この世界だと『日本語』に属するらしい。

言語が一致するなんて、どんな偶然だよ。


他にも私の世界と同じ部分を知れた。

・店でお金を使い、買ったり食べたりする。

・学校や店などの生活スタイルがある。

・私の世界でいう『異変』は『事件』に近く、決まりを破ったり、秩序を乱すものに罰を下される。

とまぁ、普段生活をするには問題は無さそうだ。


しかし、似ているようで違う部分もある。


私の世界では、お金は基本全員へ均等に配られる。

使ったお金は管理機関に自動送金される。

使わなかった分は返金し、また新たに支給される。


生活スタイルの仕組みを定めてる偉い人には、もっとフレンドリーに話しかけられるし、融通も効く。


事件が起こってもゲートが出てこないなんて、不便すぎるだろ。

自力で現場に行かないといけないなんて。


そして、“決定的な違い”。

それは、ここの住人は『力』がない。

この世界では『特殊能力』と言われるらしい。

力はほぼ全員が持っている。

水中でも呼吸できる力、暗闇でも見える力、少し先の未来を見れる力…。

そして私は――


「あ、いたいた。彗さん。」


「透李。丁度終わったところだ。」


「お、ナイスタイミングってやつですね。何か掴めました?」


「あぁ、この世界について結構分かった。良いところだな、ここ。」


「でしょ?小さい頃からここに来てるんだ。」


「透李も本が好きなのか。」


「うーん。ただ、たくさん連れて来てもらってたから、いつしか俺だけでも行くようになったかな。」


とりあえず、本を片付けよう。

一度にたくさん持って来すぎた。

他に読みたい人がいたら迷惑になってしまうな。


「あっ、片付けるの手伝うよ。」


「そうか?すまないな。」


「それにしても、かなり読んだね。」


「これで3往復目だ。」


「そ、そんなに??」


20冊程ある本を2人で手分けして片付ける。

透李も図書館によく来ているからか、大体の場所は分かるようだ。


全て片付け終わり、出口に集合した。

奥にある外の出入り口が凄い風の音をたてている。

私は少し身構えてしまう。

いや、我慢できなくはないが、やっぱり寒いのは嫌だろ。


「彗さん、これ着て?」


「ジャンバーか。いいのか?」


「うん、さっき家に取りに帰ったんだ。ついでにおばあちゃん達にも彗さんが来ること伝えたよ!」


警戒心を完全に解いた訳じゃないが、内心『さすが』と思った。

用意周到なのは、にも見せてやりたい。


「それじゃ、行こっか!僕の家、ここからそんな遠くないから!」


「分かった、助かるぜ。」


そうして、図書館から出ると冷たい強風が吹いていた。

借りたジャンバーがパタパタいっている。

これは透李に助けられたな。


「彗さんの服、フワフワしてるけどスカートだから寒いよね。」


「そこは慣れているが、この寒さはこたえるな。――ジャンバー助かったぜ。」


「…っ!」


「…?」


何故か透李が、少し目を大きくして固まった。

何かあったか?


「なんだ?」


「いや、彗さん、少しだけど…やっと笑ってくれたなって。」


「…え?」


笑った…のか?

敵かもと警戒していたこいつに対して?


―――そっか。

私は勘が鋭い。

きっとこいつは…


「…彗さん?」


「お前、いいやつだな。」

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不可思議ミスフォーチュン チェゲ @ggbtbss4gzt

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