第2話 異例な出来事

「じゃ、『すいさん』って呼ぶね!」


「さん?ここでは、名前の後に『さん』をつけるのか?」


「いや、好きに呼んでいいんだよ。」


「そっか、なら『透李とうり』と呼ぶぜ。」

 

不安が心に残るが、ひとまず前進だな。

この調子でいけば、いいんだが。


「1つ思ったんだけど、何で男口調なの?」


「あぁ、よく言われるぜ。元々私はこういう喋り方だな。」


「へぇ~、俺の周りにそんな人いないから、珍しいなって。」


「確かに私の周りにも、男口調の女はいないな。時々、うるさく『直せ』って言うやつもいるけどな。」


話しているうちに、部屋のガラス越しに着いた。

透李が帽子の大人と話をすると、何かを渡した。


「彗さん、終わったよ。行こ!」


「あぁ、すまないな。もしかすると、さっきのがお金か?」


「ん?うん、そうだよ。」


「なら、なおさらすまん。今ちょっと手持ちが無くてな。」


まだ、心を許したわけじゃないが、良い奴…なのか?

さっき、『うちにおいでよ』と言ってたし、こいつの親切心は何だ?

一応、警戒はした方が良さそうだ。


しばらく歩いていくと、冷たい風が吹いた。

顔と手と足、出してる肌は全て一瞬に固くなった気がした。

結構寒いな。


「彗さん、大丈夫?結構寒そうな格好だけど。」


「平気だぜ、私は寒さには強いからな。」


「そっか、なら良いね!女の子って冬でも足出すけど、寒さに耐性あるのかな?」


「ここにも季節はあるのか?」


「うん、あるよ。春・夏・秋・冬の4つがあって、それぞれ景色や温度が変わるんだよね。」


なるほど、結構私たちの世界と似ている部分はあるな。

しかし、建物・自然・人は少し違っている。

建物はどこか立派だが、自然は少ない。

なにしろ、人は非力そうだ。

戦えるようには思えないし、平和な所なのか?


「なぁ、透李。」


「ん?どうした?」


「ここでは異変は起こらないのか?」


「異変?そうだなぁ。事件なら時々あるかな。」


「そうか。なら、ゲートみたいなのも無いか?」


「ゲート?ちょっと、分からないなぁ。」


少し、沈黙が続いた。

冷たい風がまた通りすぎる。

次は透李から質問が来た。


「もしかして、彗さんって全然違うところから来た?」


「まぁ、多分な。こことは違う世界から来たんだと思う。」


「え!?じゃ、異世界人ってこと??」


そっか。

ここでは私は異世界人として扱われるのか。

ここらへんの人は、この環境が当たり前で私がになる訳だ。

もしかしたら、この世界では異世界人が来ることがよくあるのか?


「へぇ~、何で彗さんはこの世界に来たの?」


少し事情を話してみるか。

そこはかとなく、私は彼を頼って良いのではないかと、感じる。

こいつの特有な親切心からだろうな。


「実は来たくて来た訳じゃない。私の世界ではな、誰か悪さをすると『異変ホール』が出現する。それを見つけ次第、準備をして入り、離れた場所までワープするんだ。しかし、今回は…」


「……。」


しまった。

不安だったということもあってか、つい話しすぎてしまった。

透李も目がキョトンとしているじゃないか。


「…。」


「…。」


「すごい!彗さんって正義感がかなり強い人なんだね!」


「え?あ、あぁ。異変を解決するのは使命だと、自分で決めたからな。」


「へぇー!格好良い!!あと、彗さんって強いんだね!じゃないと、異世界にまで来ないよね!」


「あ、いや、実は異世界にワープするのは初めてなんだ。そんなこと聞いたこともない。だ。」


「なるほど…だから電車で困ってたんだね。」


こいつ、目をキラキラさせやがって…。

何故か、悪い気はしないな。

純粋に『凄い』という思いを、ぶつけられるのも初めてだし。

でも、まずはこの課題をクリアしないとな。


「なぁ?」


「ん?」


「情報収集が出来る場所はないか?日本について知りたい。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る