第2話 出産


 意識はすでにあった。産声を上げた赤ん坊は泣くことはせずにぼんやりと外界を見ていた。

 誰かに抱かれている。


 そのうちにポンポンと背中や尻を叩かれて「おや」と思った陸奥涼真は状況を理解した。


 自分の手足が短かったからである。


「これは」と、思った。


 これは、間違いなく、「おれ」ではない。おれではない体に、おれがいる。


 それは即ち、「転生」だ、と、理解した。


 とりあえず泣いたふりをしてみた。ほんとうは「ここはどこだ?」とか「なんだこれは」とか言いたかったが、やめておくことにした。


 ベッドに寝かされて陸奥涼真は改めて状況を整理することにした。


 赤ん坊には「ひかり」という名前が与えられた。


 ひらがなで「ひかり」である。


 涼真は気づいていた。自分が赤ん坊になって、そして自分のちんぽがないことに。


 そしてまた、驚いたことに、自分(?)を生んだ母親と思わしき女性は涼真のおふくろの若い頃とそっくりだったのだ。


 おっぱいを飲ませるためにおふくろ(?)の乳房に顔を近づけられたが涼真、いや、ひかりは拒んだ。


 そのうちに哺乳瓶になったが、なんともまずい飲み物だったので涼真、いや、ひかりはそれも拒んだ。


 そのうちに点滴のようなものがつけられ、母親とは隔離されることになった。


 驚いたことはもうひとつあって、父親と思わしき男も涼真の父親の若い頃そのままだったのだ。


 これはいったいどういうことだろう。涼真、いや、ひかりは考えた。


 考えたが、答えは見つからず、おしっこをしたくなって、おむつのなかに放尿した。


 ちんこでないところから放尿するのはなんとも変な感じだった。


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転生したら女になったけどほとんど「日本」だった 勝馬匠太 @katsuma-shota

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