あの世とこの世の境目
深夜玲奈
第1話
あの世とこの世の境目
ここは、あの世とこの世の境目だ。
ここに住んでいる人は、十数人しかいない。私はその一人。
下は、綺麗な白色。
上は、闇に落ちた黒色。
しゃがむと綺麗な音楽が流れて、ジャンプをすると、不気味な笑い声が聞こえる。
そんな噂が、ここでは流れている。
これは、お母さんから教えてもらったお話だ。
昔々、あの世とこの世の境目に住んでいるおじいさんがいた。
その人はジャンプをするのが好きで、一週間に何回か飛んでいた。
でもある日、おじいさんは決まりを破ってしまった。
その決まりは――
『一週間に十回以上、飛ぶな』
というものだった。
すると、翌日からおじいさんの体調は悪くなり、二週間で亡くなってしまったそうだ。
それから、ここに住む人たちは、ジャンプをあまりしないようにしている。
そんな話を、お母さんは教えてくれた。
私はある日、ジャンプをしてみたくなって、飛んでみた。
すると、笑い声は気味が悪かった。
なのに、耳の奥に残って離れなかった。
「もう一度だけ」
そう思って、また飛んでしまった。
それから私は、昔のおじいさんみたいに、ほとんど毎日ジャンプをしていた。
一か月後。
私はもう、その笑い声がすっかり癖になってしまい、一週間に十回以上、飛んでしまった。
そして夜。
夢の中で、黒い服を着た人が立っていた。
その人は、どんどん、どんどん、私に近づいてくる。
紫の液体を、飲ませようとしてきた。
私は怖くて、怖くて、大声を出そうとした。
その瞬間、口がぱっと開いてしまい、紫の液体を、どぼっと流し込まれた。
それが、何度も続いた。
一週間半が経った。
あと二日で、二週間目だ。
私も、昔のおじいさんと一緒で、亡くなってしまうのかな。
そして翌日。
そのまた翌日。
二週間目になった夜。
今度は、黒い服を着た人が、何十人も、私に近づいてきた。
凶器を持っていたり、あの不思議な紫の液体を持っていたり。
いろんなものを手にして、迫ってくる。
そして――
私はもう、ジャンプをしていなくても、
笑い声が聞こえるようになってしまった。
あの世とこの世の境目 深夜玲奈 @Oct_rn
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