第3話 誕生日と奴隷
「おーい!ミリバーブ!」
俺はある日、ニナーナル家の次男であるアウスリッツに呼び止められた。兄が弟を呼ぶという構図は本来驚くものではないのだが、アウスリッツ兄さんは今王都の陸軍幼年学校に行っているはずだ。なぜここにいるのだろうか
「お、疑問に思ってんな?お前明日誕生日だろ?祝うために帰ってきたんだよ。」
「そうなんだ。じゃあアルマーダ兄さんも帰ってきているの?」
「兄上は誕生日当日に帰ってくるんだと。よくあんな船に乗れるよな?やっぱ馬車がいいぜ、楽で」
「ふーん......アウスリッツ兄さんは船苦手だもんね」
「まあな!.......にしてもやっぱお前3歳児らしくねえな.......俺が3歳児の時は棒切れ持ってそこら辺の山登ってたぜ!」
「それはお前がわんぱくだっただけだろ。それはそうと、本当に大人びているね」
「兄上!?」
「幸運なことに早く着いてね、そのまま帰ってきたんだよ。そういえばミリバーブはもう4歳か。ならアレの時期だね」
「ああ、アレか」
「アレ?」
「ああ、ミリバーブは知らないのか。僕らニナーナル家には4歳になるときに同い年くらいの奴隷を選ぶんだよ。自分の子飼いとしてだったり、遊び相手としてだったりね。あとは貴族として他者を従える練習もあるかな?僕のリベーラやアウスリッツのクノーはそうだね」
奴隷。王国は奴隷制を敷いていることは情報収集の際に知っていたが改めてその制度を実感する。現代日本で暮らしていた身からすれば奴隷というのはいまいちピンとこない。どちらかと言えば拒否感が強い。けれどここは異世界だ。郷に入っては郷に従え。まあ自分に奴隷の処遇を一任してくれるのだから現代日本の価値観でやろう
「ミリーバーブ、おすすめは美少年だ。美少年はいいぞ、男でありながら、女のような格好も似合って両得だ。しかも女装した際の恥といつもと違う服装との違いからくる戸惑い。たまらん。やはり美少年がいいぞ」
何を言っているんだこの人は?!
「はあ、兄上は分かってない。というかそれはもう女でいいので?やっぱり頑丈な奴がいいぞ。ナニしても耐えるからな。無茶できるぞ。そういった面ではオーガ族だったりドワーフ族だな」
「は?殺すぞ」
ナニなんですかねえ?というか3歳児相手に性癖の話するか?というか、そういう目的?!あ、アルマーダ兄さんとアウスリッツ兄さんが取っ組み合い始めた。どうしよう.......
「お前のスパンキング趣味なんぞ理解が出来ん!なぜ、美を汚すのだ!?美はめでるものだろう!汚す意味が分からん!貴様は名画にワインをまき散らす趣味でもあるのか?」
「はぁ~?兄上の方こそ意味がわかりませんなぁ!同性愛なんぞ非生産的な行為!しかも美少年と言っても美の寿命は短いではありませんか!リベーラ以外髭が生え始めたら知らんぷりのくせに!貴族の義務を放棄しているのでは?というか女装させて愛でるのなら最初から美少女を買えばいいではありませんか!しかし、こっちはそれ以上になっても愛でることが出来ます!しかも、回復魔法や回復薬をつかえば元通り!私は名画を眺めるのではなく、名画を描くのです!」
ああ、もう無茶苦茶だよ.......。やっぱ性癖の戦争は異世界共通なんですねえ~。もうあの二人は無視してどのような奴隷がいいか考えよう。恐らく奴隷や俺が死なないか奴隷がなんかやらかさない限りそばにいる、使用人に近いか。貴族としては多少信頼できる駒を増やせる、奴隷側からすれば普通よりはいい待遇が与えられる(一部を除く)、奴隷商は貴族とコネが出来て三者両得か。うーんやっぱ異世界らしく獣人とかドワーフ、エルフとかの少女がいいな。やっぱ、うん、男だからね。欲にあらがえねえんだ。あと、友人とかは学校とかでできるだろうしね。できるよね?不安になってきた。そうして俺は半ば現実逃避をしているとメイドたちやリベーラさんやクノーさんがやってきて兄さんたちを止めた。父さんからすっごく絞られてた。その過程で二人の性癖が父さん由来であることを知った。知りとうなかった、かっこいい父親の最初の性癖が美少女に女装させながらの首絞めックスだなんて.......。そしてそれを承知で結婚した母さんもすごいなって思った。ちなみに帰り際アウスリッツ兄さんが
「これ、ミリバーブは父さんの趣味をそのまま継ぐんじゃね?」
と言っていた。しないが?確かに前世の性癖の1つにショタが触手に苛められるものがあったが、さすがに現実でするわけない、うんそうだ、しない、そうに違いない。俺は変態じゃない。そう思いながら俺は自分の寝室へと向かった
誕生日パーティーでは家族や使用人たちが祝ってくれて嬉しかった。3歳のころのパーティーは家族間だったけど今回は使用人も参加している。こんなに大勢が祝ってくれるなんて初めてだ。そしてここから俺の異世界らしい生活が始まる。
次の日、俺は父親に連れられこの街での奴隷産業を独占することが許可されているミリアベ商会に向かった。そこには日用品、武器などが多く並べられていた。さすが王国でも1,2を争う商店だ。本店は品ぞろえが違う。
「これは、これは、侯爵様。どうぞ、お入りください。例のアレの準備はできていますので」
「さすがだな、ミリアベ。ではミリバーブ、選びなさい」
そういって裏に入ると多くの奴隷が並べられていた。王国の奴隷は基本的に戦争奴隷、経済奴隷、犯罪奴隷の三種類だ。今回選ぶのは戦争奴隷と経済奴隷のなかから。犯罪奴隷はほとんど成人している。その点経済奴隷は成人から子供まで存在する。戦争奴隷も攻め落とした都市の子供がここに送られてくる。ちなみに値段で言うなら技術職>一般男性>子供・女性>犯罪者である。そして王国は多民族国家であり、様々な種類の子供が存在する。実際今俺が見ているのは人狼族と呼ばれる狼人族と人間の中間の様な種だ。種族ごとの特徴があり、父さんが俺に渡した冊子には各民族の特徴が書かれている。俺の狙いはあまり戦いたくないので戦闘向きな人獣族(獣人族と人間種の中間的な種)かオーク族だ。しかし、あまりピンとこない。確かに美少女がいたり、強そうな見た目であったりで頼もしそうではあるのだが、いかんせん食指が動かない。そう考えながら歩いているとふとある2人が目に留まった。そこにはエルフ族と人獣族の2人がなぜか同じ鎖でつながれていた。
「おお、坊ちゃん、お目が高い。彼女らはエルフ族と人獣族のハーフの双子なのですが、それを気味悪がった親が売ったのです。どうです?双子は珍しいですよ?」
「双子は辺境の方では気味悪がるのはよくあることだな。特に同性の双子はなおさらだ。なぜだかはしらんが。で、気になっているのか?」
「うん」
「ならこの2人をくれ。ミリバーブは名前を考えておけよ」
「毎度ありがとうございます。ではいつもお世話になっておりますので、割引しておきます」
「悪いな。では、その代わりに私も妻にお土産でも買おうか」
名前。基本的に親や親族からつけられるが、奴隷は違う。特に子供の奴隷は名前を言わない親が多い。そもそもつけてない、仮に戸籍のためにつけていてもそれを覚えていないというのが多い。今回の様な忌み子のような場合ならなおさらだろう。だから子供の奴隷の多くは買われた先で自身の名前を得る。多くの場合、それがはじめて与えられたものになる。兄さんたちも同じようにつけたのだろう。しかし、名前をつけるというのは4歳児には少々難しいのではないだろうか。色々な候補を頭に浮かべながら馬車で家に帰った。あの子たちは今頃汚れを取るために風呂にでも入っているだろう。本来奴隷にはそこまでの扱いをしないが今回の奴隷は俺の側近になる予定なのだ。だから普通の奴隷上の待遇を受けている。それが終わったら奴隷たちの所有者をステータスに刻印する。その際に名前が必要になるのだ
「えっと、金色の髪のほうが、リシュリーノ、銀の方がスヴォーフ」
「わかりました。では、彼女らのステータスカードを坊ちゃんに渡しておきますね」
ステータス
名前:リシュリーノ
年齢:4
魔力:なし
ギフト:【賢臣≪グレイエミネンス≫】Ⅰ 代償:不信感
才能:簿記◎
政治◎
交渉術◎
狂信▲
備考:主;ミリバーブ=アーベル・ニナーナル
【賢臣≪グレイエミネンス≫】:Ⅰでは主の身体能力向上
ステータス
名前:スヴォーフ
年齢:4
魔力:あり
ギフト:【軍の頭脳≪マーシャル≫】Ⅰ 代償:狂気
才能:戦略◎
戦術◎
戦闘◎
狂信▲
備考:主;ミリバーブ=アーベル・ニナーナル
【軍の頭脳≪マーシャル≫】:Ⅰでは直感的に相手の作戦が理解できる
買ってもらった奴隷がSSRだった件について。これを見た兄さんは頂戴?といい、父さんはガッツポーズしてた。まあこの天才たちがいたらもっと家は強くなるよねって。俺がここに残るか別の領地に行くかわからないけどこいつらが手柄あげたら俺、ひいてはニナーナル家の手柄になって評判上がるしなあって。リシュリーノたちは俺の近くの部屋を与えられた。俺ほどではないにせよ上等なベッドや服が用意されていて目を白黒させていた。アイリスさんに聞くと上級使用人用のものらしい。もしかして、この家って結構使用人にやさしい?因みに使用人は基本離れに住んでいる。言わば社員寮だ。そして夜勤用の部屋は地下にあるらしい。リシュリーノたちはその点でも破格の待遇だろう。更には側近になるために一緒に授業を受けるらしいから、やはりこの家は福利厚生が厚い。そう思った。
用語
子供の奴隷:基本的に売られるか戦争捕虜の二択。貴族が子供の奴隷を買い、子供のペットに近い立場にするのはよくある。奴隷は大抵の法律の適応外である。他にも孤児院の子供を使用人名義で引き取ることもあるが孤児院の子供たちは法律保護下に置かれており、法律に縛られない奴隷を買うのが大半である
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