第2話 家庭教師と異世界授業
「あら、エルザじゃない、貴女も三男坊の家庭教師に?」
「んー、私はどっちかというとお坊ちゃんのギフトのためかな~。私のギフト【祝福を識る者≪コンパスオブギフト≫】で代償とかいろいろ研究するためのだったりギフトの使い方とかかな~。いや~自分の趣味しながらお給金貰えるなんてし・あ・わ・せ!」
「相変わらずね、その知識狂いは」
「えへへ~。それほどでも~」
「お久しぶりです、ニナーナル卿。貴方様がミリバーブ様ですね?私がこの地のニナーナル研究所魔法部副長のデュアンヌと申します。魔法分野での家庭教師になります。よろしくお願いいたします」
「あ、次私だね!私は祝福部の研究員のエルザ!ギフトのことなら私にお任せあれ!」
家庭教師は両方とも女性でした。2人ともやばいくらい美人。デュアンヌさんは凛とした感じの女性で、エルザさんは天真爛漫なかわいい系。お父さんありがとう!やっぱ美人の家庭教師っていうのはテンション上がる。そしてこんなに若いのに貴族の家庭教師を任されるくらい実績を積んでいるんだなあ、すげえや。
「エルザ君……まあいい、ではよろしく頼む」
「はい、わかりました!ではちょっと失礼」
そういうとエルザさんは俺の頭を触りながら何やらうなっていた。うなりながら5分くらいが経過しただろうか。手を頭から離しブツブツとメモを取っていた。そしてもう一度頭を触った。そしてうなりながら苦虫を噛みしめたように言った
「まず能力としてはレベルⅠが自身と生物との翻訳ですね。この時発言者の言いたいことがそのまま翻訳されるので解釈が双方異なるということはほとんどないでしょう。しかし隠し事を見破れるというわけではありません」
「ほう」
「基本的に一般の翻訳系のギフトでは多少の齟齬が生まれます。例えば負けませんよというと私に負けはありえないという方に翻訳されたりして元の言葉に比べて語気が強くなることがありますがそれがなく、語気は変わらないんです。そして隠し事は見破れないというのは客人に対してスコーンを勧めるとそのまま『スコーンいかがですか?』となり、その真意である『早く帰れ』は翻訳されません」
「ふむ、ではⅡは単位の変換か?」
「はい、その通りです。これは王国法に変換されるようです。そしてこのギフトはⅡで成長が打ち止めである模様です。一般的な翻訳ギフトの段階がレベルによって語彙力が変化することを考えればご子息様のギフトは破格と言えます」
「では、肝心の代償は?」
「運命の促進です」
「成程、これは迷惑な代償だな」
?運命の促進が厄介な代償なのか?そもそも運命の促進ってなんだ?
「運命の促進とは別名英雄の資格でございます。言い換えるなら艱難辛苦が多くなるというものです。英雄というものはそれらを乗り越え、ギフトのレベルを上げ、成果を上げるものですのでこのような別名が付きました。そして宗教勢力はこの英雄を担ぎ上げます」
エルザさんの発言に首をひねっているとデュアンヌさんが解説をしてくれた。成程、魔物や強敵を引き寄せる代償ね。しかも宗教が絡んでくる。これは厄介と言うわ。えーこれどうなんの?魔闘は使わざるおえなくなるだろうから少なくとも狂気にのまれないようにしないと駄目だな。というか代償が判明してわかったことだが魔闘でよかったー!これでまた内政系の能力なら仮にやばいモンスターが来たら終わってたもんな。神に感謝。けど、その神……俺を娯楽目的で殺してんだよなあ……。やっぱ神ってスケールが違うわ
(これでは婚約者が絞られるな。運命の促進をありがたがるのは祝福教派か我らの様な武官派だ。当初考えていた文官派とのつながりのためにそこから婿入りさせることが難しくなる。それか……辺境伯関係か…)「わかった。では、エルザ君は引き続き息子のギフト研究に勤しんでくれ。では光輪が収まり次第デュアンヌはいつも通り頼む」
「かしこまりました」
2人は帰っていった。そして光輪が収まると俺は二人に連れられ、勉強室へと向かった。なんでも兄二人も使っていたらしい。中に入ると前世の教室、どちらかと言えば大学のゼミ室に近かった。俺はデュアンヌさんに言われ、席に座った。エルザさんは俺の隣の席に座った。美人の先生に隣の席の人も美人ときた。できれば前世で体験したかったなと思いつつ恐らく前世では授業どころではなかっただろう。現世の俺はまだ3歳なのでそのような機能はまだまだなので大丈夫だ
「ではまず、国語と算術を教えます。進み具合によりますが魔法やそれに伴うモンテン語は5歳以降に教える予定です。ではまずは公用語である王国語の五十音を書けるように、そして自身のお名前を書けるようになりましょう」
そう言ってデュアンヌさんは五十音が書かれた表を出し、それがそれぞれ書かれたプリントを渡した。ふ、これでも俺はこれまでの人生文系だった。つまり!こんな言語、3歳児の頭なら簡単にマスターしてやるよ!
「ふむ、えー……ミリバーブ様……王国語はこのような文字ではないはずですが……」
五十音ってさ、日本語とおんなじなんだよね。そのままの勢いで書いちゃった。いや今度こそ、やってみせる!
「なぜ、同じ文字を書くんですか……!」
……もしかして俺が見えてる文字と書かれてある文字が違う?ギフトのせいか?ギフトのオンオフ、というか音声認識だけオンとかできないのか?
「あー、ミリバーブくん、頭の中で視覚認識の翻訳のカーテンを閉めてみるイメージってできる?翻訳のギフトって文字知らないと各々の視えてる文字に翻訳されちゃうんだよ~。できる?」
あーなるほど!翻訳ギフトのイメージ……イメージ……あ、あった。音声翻訳と視覚翻訳のスイッチがある。この視覚翻訳をオフにして、表を見る。うわ、なにこれ。さっきと見えてるものが全然違う。そういえば疑問に思わなかったわ。なんで日本語で認識してるんだろうって。今まで認識を重視しててそこに書かれた文字を気にしてなかったわ
「では、もう一度お願いします」
そういって同じプリントを渡してきたので表を見ながら書いた。完璧だ
「多少の悪筆ですが、きちんと書けていますね。では次は表を取りますので書いてください」
表を見ずに書く。全然わからん。王国文字は日本語やアルファベット、と違ってわからん。とりあえず書いてはみたが……
「9割ほど間違いですね。では間違えた文字を10回書いてください。まずは王国文字を覚えることに重きを置きます」
「はい」
こうして俺は1週間ほどかけて王国文字の音声と形を覚えることに成功した。いや~、むずい。全く違う形すぎて授業以外でも勉強した、というかメイドに頼んで、絵本を読み上げてもらって形と音を一致させた。やっぱこの2つは一緒に覚えるに限る
「では、次は名前を書けるようになりましょう。ミリバーブ様の綴りはこうです」
そう言ってデュアンヌさんが俺のフルネームを黒板に書いた。長い。なんだよミリバーブ=アーベル・ニナーナルって。長すぎんだろ、覚えるにも3歳児には無理があるだろ!
「まずは、ミリバーブを、次にアーベル、最後にニナーナルを書けるようになりましょう」
よし、ちゃんと文字を覚えてるからこれはいける
「何も見ずにフルネームを書いてください」
たしか、ミリバーブ......なんちゃら・ニナーナルだよな。なんだっけ、アールベル?アルベルト?どっちだ?いや最初の文字はエイでも読めたはず、エイベルだ!
「綴りは合っていますが、音は違いますね。エイベルではなくアーベルです。ではもう一度」
アーベルか!よし、よし、次は間違えないぞ
「はい、完璧です。今日ははやいですがここまでにしましょう。明日からは算術の授業を始めます。昼食までは国語、昼食から算術です」
そこから2教科に増えたものの正直算数に関しては数字が同じだったので躓くことはなかった。四則演算とかで躓くわけないんだよなあ。するとその時間が減り、国語の授業が多くなった。まあ単語とか難しいしな。けれども3歳児の脳というのは一回ノるとどんどん覚えることが出来るスポンジみたいなもの。ちゃんと書けるようになった。すると、頭の中であの神の音声が響いた。なんでも一定の語彙を習得したことにより、知っている語彙の綴りを間違えないようになったらしい。ちなみにこれはレベルⅠの機能拡大であるらしい。まってレベル以外でも発展形になるの?うそ、俺のデータにないんだが?
Side 父
「ミリバーブの様子はどうだ?」
「はっ、国語は最初こそ文字を覚えるのに手間取ったものの、文字を覚えてからは水を得たマロンルのごとく語彙を覚えております。算術に関しては四則演算は完璧、単位に関してもギフトの機能を抜きにしても早く覚えております。なので、これからは魔物や世界情勢に関する授業を増やしていこうかと思っております」
「ふむ、わかった。なにか不足なものがあれば遠慮なく言ってくれ。すぐ用意する」
「私からはギフトのことで1つ進展があったよ~。坊ちゃんのギフトはレベルⅡで打ち止めだったからは予測してたけど、成長型だったね~。今回の成長は取得した語彙を間違えない。この点から見るに別の言語の文字を教えたら自動で覚えるようになるかも~ってところかな?普通のギフトと違って文章ギフトに近いからそれ以上のことが起こる可能性は大だけど~」
「わかった。あと4歳の誕生日と次の日の授業は中止だ。伝統のあれがある」
「ああ、アレですか」
「坊ちゃんはゆがんだ性癖にならないといいね~」
「「へっくしゅん」」
用語
王国語:王国の公用語である。第二公用語は各領地の方言。ニナーナル領の元は開拓地であり、様々な方言を使う人々の集まりであったので、第二公用語は存在していない
モンテン語:古代より使われている言語。現在は魔法言語としての側面が教国以外では強い。しかし今でも教国をはじめとする宗教界では公用語になっている
成長型ギフト:ギフトの一種。成長型はギフトのレベルは低く(通常のギフトはレベルⅩまでだが成長型はⅤ未満が大半)汎用性に欠けるがその分ギフトの深掘りにリソースを割く
例:使役ギフト(通常)―レベルが上がるごとに使役できる魔物や動物の種類が増えるが、自身の力量以上の存在は使役できない
使役ギフト(成長型)―一部の種類に限定されるが、自身の力量以上の存在を使役可能
文章ギフト:ギフトの一種。通常のギフトに比べ、汎用性が高い。一方で代償が通常のギフトと比べ大きいという研究報告も出ている
例:【翻訳】―レベルが高くなるほど自然な翻訳になるがニュアンスのずれが生じる。人以外の言語は翻訳できない
【完全翻訳者≪トランスレーター≫】―ニュアンスのずれがほぼなく、さらに自身が知らない概念の解説が脳内で補完される。人以外の言語や単位の翻訳も可能
祝福を識る者≪コンパスオブギフト≫:ギフトの効果や代償を識ることができる。水晶の作成する上で重要なギフト
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