第6話 金の紙切れ

 速い足音の主はすぐに姿を現した。


 ギンジさんだった。

 私が手を口に当てて驚いているうちにギンジさんがどんどん増えていく。ギンジさんたちは不敵な笑みを浮かべていた。


「これはこれは。ミオリ様と秘匿大勇者のケンサク様。あっしの足の修復と影分身に驚いてるでがんすね?」


 ケンサクさんは一歩進み出た。


「不愉快だな。まずは名乗りたまえ。もうその必要はないがね」


 空から青白い光で照射されたギンジさんだけが真っ二つに裂けて倒れた。ほかのギンジさんたちは消えていた。もしかして、さっきのステルス戦闘機? でもすぐに体が修復するんじゃない?


「こいつはこのままの姿で生き続けることになる。原理はわからない。ノブさんめ、自動操縦にして寝てるな」


 ケンサクさんは拳銃で裂けたギンジさんを撃ったが外した。ギンジさんの半身はそれぞれ逃げようとしていた。


「あっしがダメでもキンジの兄貴がいるでがんす。兄貴、おもさげねえ」


 再び青白い光に照らされた両半身はともに細切れになった。ケンサクさんは人の心がないのかな。


「僕には快・不快、愉快・不愉快しか感情がない。単細胞生物なんだ。そうプログラミングされている」


 ケンサクさんはアンドロイドなの? でも、そうだという可能性も考慮して柔軟に対応しないと記者はやっていけない。


「おい! てめえら! よくもギンジをやってくれたな!」


 後ろを振り向くと金髪リーゼントで特攻服を着た古き良き(?)時代を思わせる若者が立っていた。たぶんキンジって人だと思うけど、そこにいたら危ないよ?


「おい! そこのマブいねえちゃんよお!」


 私はスマホを彼に向けるとカメラのシャッターボタンを連打した。


「は? あんた舐めてんの? 私のどこがねえちゃんなんだよ!」


「おい君、人の心はあるのかね? 若者が紙切れになってるぞ」


 私は我に返った。ケンサクさんは私のスマホのカメラレンズを指で覆っていた。金色が混じった紙切れが隘路を吹き抜けるビル風に舞っていた。

 しまった。やりすぎた。まさかアンドロイドに制止されるとは。


「どろろが熱源反応を感知した。王都の丘陵庭園にいる。まさか生きていたとはね」


 どろろ? ドローンのこと? それより生きていたっていうのは恐怖の大王のことだよね。ちょっと嬉しい気が……。だめだ。私は記者として大勇者として仕事をまっとうしないと。


「これで代用できるかい?」


 ケンサクさんは一眼レフカメラを両手で差し出した。重い! てゆうか、これKANONの最新モデルじゃん。文句はないけど、バズーカ砲みたいな望遠レンズは……いらん! 広角レンズがよかったんだけどな。


「ノブさんはまだ寝ぼけているようだな。この先の王立公園に攻撃ヘリと車がある。君はどっちに乗りたいかね?」


「車です」


 私は即答した。


「僕もだ。攻撃ヘリはこりごりだ。車にしよう」


 私は乗り心地の悪い車に揺られながら考えていた。これって陸上自衛隊の高機動車だよね。

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