第4話 武力介入権

 10分ほどしてケンサクさんはロビーに足音を響かせた。彼は着席すると、


「この世界における君の武力介入が許可された。あくまで一時的な措置だが」


 と言いながらスマホをいじっていた。


「そうなんですか」


 大勇者は志願制で赴任地は選べない。日常生活を送りながら密偵として勇者村に情報を定期的に送信する義務がある。そのほかは自由だ。ただし、赴任世界の事象に武力介入することは許されていない。


「要は秘匿大勇者の僕と同格というわけだな。なにか質問はあるかネ?」


 いやいや、あるに決まってるじゃん。秘匿大勇者!? 伝説だと思ってたけど本当にいるんだ。


「武力介入の執行対象は?」


「ワシの爪団だ。恐怖の大王崇拝者たちだ。まあ、大王の恒星移動戦艦は僕が落としたがネ」


 よくわかんないけどすごい人だな。


「君の定期報告を受けているうち村長が議会で君の武力介入権と僕の派遣を専決処分した。この世界の神からの要請だし、緊急案件だからね。議会の採決を待つわけにはいかない」


 困ったな。あんまり戦闘はしたくないんだけどな。ケンサクさんはずっとスマホをいじっていた。


 てゆうか、なんでこの人、喪服なんだろう。

 あんまり凝視しないようにしてるけど、誰も訊かないのかな。


「喪服のことかい? 生まれた子供がすぐに死んでしまってね。喪に服している間に勇者村にいたんだ。だから転生ではなくて厳密には異世界転移だな」


 私は黙礼したまま二の句が継げなかった。すごくお気の毒だけど、人の心を読む能力の持ち主なのかな。なんだかすべて見透かされてる気がする。


「君の能力は村長から聞いている。僕がいなくても十分なくらいだ。好きにするといい。僕は裏方に徹する」


 え。私が裏方でいいんですけど。

 私の能力は発動条件が特殊だからなー。


「あと、僕は38歳で君は40歳のようだが、同格とはいえ上官は僕だから口調に関しては目を瞑ってくれたまえ」


「……はい」


 その情報いらねえわ! 年下かよ! ま、40にもなると年下とか年上とか言ってられないんだよなあ。恋愛なんて諦めてるからいいんだけどさ。


「では行こうか。やつらのアジトを一網打尽だ」


 え。いまから? もう夕方なんですけど。

 ケンサクさんは立ち上がった。


「夕方から夜分に悪党は動く。そう思わんかネ?」


 本当に人の心が読めるのかな。

 ちょっと怖いわ。


 私はスマホで誰かと電話しながら建物を出ていくケンサクさんに付いて行った。

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