第2話 おにぎりが中った男

今回のキャンプ、実はもう一人クラスメイトが来てるんだよな。

テニス部の百崎みつみね!

名字も下の名前も舌噛みそうだから、みんな「ミッチー」って呼んでる。雪みたいに白い肌に、鼻と頬の高めの位置に散らばったそばかすがチャームポイントの、完全に「可愛い系男子」! 女の子に間違えられても文句言えねえレベル! 性格は優しくて気弱だけど、一人称は普通に「俺」。


で、そのミッチーがさっきからトイレ行って戻ってこねえ!

マジで時間かかりすぎだろ! 増尾のおじさん(運転手)が「家で握ってきたおにぎり食えよ!」ってくれたやつ、俺と増尾はガツガツ食ったけど、ミッチーは「う……、ちょっと味が……」って顔してたもんな。

やっぱ男の一人暮らしおっさんの衛生観念って信用ならねえ! 俺らは鉄の胃袋だから平気だったけど、ミッチーは腹弱いし……、もう完全に的中じゃねーか!(外でケツ出すのだけは絶対イヤだ……せめて簡易トイレあるって聞いて安心してたのに……)


とか考えてたら、やっとミッチーがフラフラしながら戻ってきた。「宅間くん……おにぎり、全部出ちゃった……」おい! そんなストレートに言うなよ! 「出ちゃった」って表現、破壊力高すぎだろ! 頭の中で「うわっ!」って全力でツッコミ入れながら、表面上は「お、おう……大丈夫か? 座れ座れ!」って肩支えてやったのに、そこへタイミング悪く増尾登場。「おいミッチー、出たならもうスッキリだろ! さっさとテント設営手伝えよ!」


ひでえ!!

下痢したばっかの人間に即労働強いるな! 顔面蒼白で足ガクガクなのに「スッキリ」とか言うな! ミッチー今にも倒れそうじゃねーか! 俺が「ちょっと待てよ増尾! 休ませてやれよ!」って止めようとしたら、ミッチーが震える声で、「……だ、大丈夫……俺、手伝う……」 お前、優しすぎんだよ! そんな状態で「大丈夫」とか言ってんじゃねえ! 今お前が一番「大丈夫じゃねえ」だろ!!

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