第4話

  ”人”と、”天”を、しばらく眺めていると…

  そういえば、東映フライヤーズ(古っ!)に、昔、白仁天、という外国人がいました。と、思いついた。 左打者やったと思う。 昔のプロ野球の、名選手で、至極マニアックな、オールドネームというのか懐かしいと思う方はかなり昭和の前半の世代…は多い。


 王、長嶋ですら古い。

 桑田、清原、松井、イチロー…プレーを見たことのある人ももう少なくなりつつある。


 だから、東映というだけで「?」になる。 ロッテは健在だが、昔はIT企業というのが全然影も形もなかったのです。

 古今東西の野球選手の中で最も”カッコイイヒーロー”は? という設問があった場合、現代ならオータニになるが、ちょっと前ならイチロー。 その前は野茂か清原? その前はナガシマだったと思う。


 さらにその前は、まあスタルヒンとか藤村冨美男? 沢村栄治もいた。 川上哲治や野村克也は、マニアックな苦労人タイプで、アスリートというタイプではないが、野球はこういう割とイマジネーションを膨らませやすい、テンポの緩いところで、感情委移入しやすいのかも。


 「巨人の星」とかでは、瞳の奥でメラメラと炎が燃えている投手と打者が対峙しあって、いつまでも話が進まない感じが嗤い話になったりしたが、そういうのが不自然でないくらいに大時代なムードでもあった。 「やあやあ遠からん者は音にも聞け、…」と、果し合いの前に呼び交わしたという伝統をほうふつさせる。


 そういう古き良き往年のプロ野球のムードを味わいたければ? 山際淳司さんの「江夏の21球」というドキュメンタリー小説が好個の例です。

 

 「スローカーブをもう一球」という単行本所収ですが、オレらも熱狂した、40年くらい前の日本シリーズの名勝負を克明に再現していて、息詰まるほどの迫真感と面白さがありました。


 「昭和」は、もう遠い夢のかなたみたいなイメージやが、その昭和のころに華やかだった、「俺たちのプロ野球」、そういうものの、極限的に美化された結晶が、時が止まったかのようにこの小説の中にピン止めされている…野球の小説とか書いていますが、いつもこういう往年の「夢空間」の再現をすることを念頭に置いている自分がいます。 それは「昭和の夢」やったのです。

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