森が、私を喰う日

ソコニ

第1話 森が、私を喰う日


プロローグ

森は、待っている。

美咲が最初に気づいたのは匂いだった。腐葉土でも獣臭でもない。甘ったるくて、それでいて金属的な——血と蜜を混ぜたような匂い。

「…こんな道、あったっけ」

スマートフォンの地図アプリは三十分前から圏外を示している。GPSの青い点は、とっくに地図の外で明滅するのをやめていた。

会社の先輩、あの女。

『いい加減、言い返したら?』

美咲の肩を叩きながら、別の新人には優しく微笑む。

上司、部長。

『君が気にしすぎなんだよ』

セクハラを訴えた翌日、美咲の企画書はゴミ箱に入っていた。

逃げ出した。新幹線に飛び乗って、適当に降りて、気がつけば山道を歩いていた。

足元の土が、濡れている。

雨は降っていないのに。

しゃがみ込んで、指先で触れる。ぬるい。脈打っている——そんな錯覚。

『あなたも』

声がした。

『復讐したい?』

美咲は息を呑んだ。誰もいない。だが確かに聞こえた。耳ではなく、頭蓋の内側から響く声。

女の声だ。若い。それでいてひどく古い。

土の中で、何かが蠢いた。

白い糸。髪の毛ほどの細さで、無数に絡み合いながら這い出してくる。美咲の指先に触れた。

温かい。

「——っ」

引き剥がそうとした。だが糸は既に爪の隙間に入り込んでいた。痛みはない。むしろ心地いい。母親の胎内にいたころの、羊水の感触に似ている。

『私が、教えてあげる』

森が、笑った気がした。

美咲の視界が滲む。涙じゃない。眼球そのものが溶けかけているような感覚。

森の奥から、何かが近づいてくる。足音はない。ただ、枝が軋み、葉が囁き、土が呼吸する。

『痛みを、取り戻す方法を』

美咲は立ち上がろうとして、転んだ。両手が土に埋まる。肘まで。

温かい。温かい。温かい。

森が、彼女を抱きしめている。


第一章:帰還

私の名前は、柚木梢。

そう言えるうちに、書き留めておく。

二〇三四年十月十五日。私は故郷に帰ってきた。ここで死ぬために。


バスの最終便は午後三時に終わる。そこから先は、徒歩だ。

国道から外れた瞬間、携帯の電波が途絶えた。別にかまわない。かける相手もいない。

アスファルトが途切れ、砂利道になり、やがて獣道になった。

九月の台風で、道の半分が崩れている。乗り越えながら進む。汗が首筋を伝う。十月だというのに、気温は三十度を超えている。

気候変動。

かつて私が調査していたテーマ。森林の保水力低下、表土流出、生態系の崩壊——それら全てを、報告書にまとめた。

上司の牧村は言った。

『柚木さん、これは使えない』

『なぜですか』

『データが偏ってる。もっと中立的な視点で』

中立的。

あの男にとっての中立とは、開発を邪魔しない程度の警告のことだった。

私の報告書は改竄された。

村の土砂災害リスクは「低」と書き換えられた。

私の名前は、共著者として記載された。

そして六ヶ月後、土石流が村を飲み込んだ。


廃村の入り口に、朽ちた鳥居が立っている。

注連縄は切れて垂れ下がり、賽銭箱は苔に覆われていた。

ここから先が、私の生まれた場所。

足を踏み入れる。

空気が、変わった。

濃い。粘性がある。肺に吸い込むたび、何かが絡みつく。

匂いがする。

腐葉土——だけじゃない。もっと甘い。果実が発酵する匂い。それと、かすかに金属臭。

血?

いや、違う。

これは、私が知っている匂いだ。


集落跡は、森に還りつつあった。

家屋の屋根は陥没し、壁には蔦が這い、窓ガラスの破片が苔に埋もれている。

かつて二十三世帯が暮らしていた。今は誰もいない。

いや——

「…人、じゃない」

鹿だ。

集落の中央、かつて公民館があった場所に、一頭の牡鹿が立っている。

だが、おかしい。

角が、木になっている。

本当に、樹木になっていた。枝分かれし、葉をつけ、小さな実までぶら下がっている。鹿は微動だにしない。生きているのか、死んでいるのか。

私が近づくと、鹿がゆっくりと首を巡らせた。

眼球が、ない。

眼窩の奥に、白い菌糸が詰まっている。

それでも鹿は私を「見て」いた。

そして——鳴いた。

「ア……ア……」

鹿の声じゃない。

人間の、女の声だった。

私は走った。


婚約者の拓海が死んだのは、公民館の前だった。

土石流に飲まれて、首から下が瓦礫に埋まった状態で見つかった。

母さんは、自宅の二階で溺死していた。

父さんは、まだ見つかっていない。

私は葬儀に出なかった。

出られなかった。

牧村が私を告訴したからだ。『業務上横領』と『名誉毀損』。でっち上げだった。だが証拠は揃っていた。私の名前で作られた偽造メール、改竄された経費記録。

弁護士は言った。『勝てません』

私は法廷で、言い続けた。『私は何もしていない』

判決は、執行猶予付き有罪。

それより辛かったのは、世間の目だった。

『あの女、自分のミスを上司に押し付けたらしい』

『災害で家族が死んだからって、同情引こうとしてる』

『メンヘラでしょ、どうせ』

SNSは炎上した。顔写真が晒された。住所も、電話番号も。

私は、消えた。

そして今、ここに戻ってきた。


拓海の墓は、ない。

遺体は火葬されて、骨壷は拓海の実家に引き取られた。

でも私は知っている。拓海が好きだった場所を。

集落の外れ、小川のほとりに、一本の楢の木がある。

拓海はよく、その木の下で昼寝をしていた。

『梢、将来ここに家建てようか』

『山奥すぎるでしょ』

『いいじゃん。静かで』

拓海は笑っていた。

私も笑っていた。

あの頃の私たちは、未来を信じていた。


楢の木は、まだあった。

だが様子がおかしい。

幹が、膨れている。瘤のように膨らんで、表面が裂けて、中から白い繊維が溢れ出している。

菌糸だ。

木全体が、巨大な菌床になっている。

私は木の根元に膝をついた。

持ってきたロープを、枝に括りつける。

輪を作る。

首に通す。

「拓海」

声が、震える。

「ごめん。私、もう無理」

風が、止まった。

森が、静まり返った。

「一緒に、逝かせて」

足を、踏み出そうとした。

その瞬間——

土が、動いた。

私の足首に、何かが巻きついた。

見下ろす。

白い糸。無数の、白い糸が、土の中から這い出して、私の足を、脚を、腰を這い上がってくる。

「な、何——」

引き剥がそうとした。だが糸は皮膚に食い込んで、肉に潜り込んで——

痛くない。

痛くないのが、怖い。

むしろ温かい。誰かに抱きしめられているような。

「やめ——」

糸が、口の中に入ってきた。

舌の上を這う。喉の奥へ。

吐き出せない。

息が——

意識が——


暗闇の中で、声が聞こえた。

『痛かったね』

女の声。

私の声?

違う。私じゃない。でも私に似ている。

『辛かったね』

温かい。

『悔しかったね』

そうだ。

『許せないよね』

そうだ、そうだ、そうだ。

『だったら』

視界が開ける。

私は、土の中にいた。

いや、違う。

土が、私の中にいる。

菌糸が全身に張り巡らされて、血管と絡み合って、神経と融合して——

私は、森になった。

森は、私になった。

そして私たちは、知っている。

誰が、ここにいるのかを。

誰が、来るのかを。

誰を、許してはいけないのかを。

『教えてあげる』

声が、囁く。

『痛みを、取り戻す方法を』

私の手が、土を掴んだ。

握りしめた土の中で、何かが蠢いている。

生きている。

成長している。

待っている。

復讐を。


目を開けると、夜だった。

私は楢の木の下に倒れていた。首のロープは、いつの間にか解けている。

起き上がる。身体が軽い。

手のひらを見る。

爪の間に、白い糸が見える。

皮膚の下を、何かが這っている。

「これ、は……」

答えは、分かっている。

菌糸だ。

私の中に、森が入り込んだ。

いや——

森の中に、私が溶け込んだ。

境界が、曖昧になっている。

どこまでが私で、どこからが森なのか。

でも、不思議と怖くない。

むしろ、安心する。

一人じゃない。

もう、一人じゃない。

森が、私を抱いている。

そして森は、知っている。

私が何を望んでいるのかを。


携帯電話を取り出す。

圏外のまま。

でも、必要ない。

私には分かる。

牧村が、明日この村に来ることが。

開発予定地の最終確認だと。

土地の買収は既に終わっている。村の遺族たちは、二束三文で土地を手放した。

牧村は、ここにリゾート施設を建てる。

『気候変動時代の、サステナブルな観光』

そう銘打って。

私の研究データを盗んで。

私の名前を貶めて。

私の家族を殺して。

その上で、この村を——拓海が愛したこの森を——金に換える。

「来るといい」

私は呟いた。

爪の間の菌糸が、脈打つ。

「待ってる」

森が、応えた。

木々が軋む。

葉が囁く。

土が、呼吸する。

私たちは、一つになった。

そして私たちは、知っている。

復讐の、やり方を。


第二章:共鳴

田所が村に来たのは、翌朝だった。

私には分かった。森が教えてくれた。

足音。心拍数。汗の匂い。恐怖の味。

森は、全てを感じ取る。

そして私も、感じ取る。


田所健一。元同僚。

私が牧村の不正を告発したとき、彼は黙っていた。

会議室で、私が一人で立ち上がったとき。

田所は、目を逸らした。

『柚木さん、ちょっと考えすぎじゃないですか』

それだけ言って、彼は牧村の隣に座った。

裁判が始まったとき、田所は証人として呼ばれた。

『柚木さんは、精神的に不安定でした』

『被害妄想が激しくて』

『周囲に攻撃的で』

全部、嘘だった。

でも田所は、淀みなく証言した。

牧村に命じられて。

保身のために。


田所は、土砂災害の慰霊碑を見に来たらしい。

村の入り口に建てられた、白い石碑。

彼はその前でスマートフォンを取り出し、写真を撮った。

SNSに投稿するつもりだろう。

『故郷の悲劇を忘れない』

『亡くなった方々のご冥福を』

そんな文面とともに。

吐き気がした。

私の吐き気か、森の吐き気か、もう区別がつかない。


田所が森に入ってきた。

慰霊碑から集落跡へ続く道。彼は迷わず歩いている。スマートフォンの地図を頼りに。

圏外なのに、彼は気づいていない。

画面に映っているのは、古いキャッシュデータ。

道は、もうない。

台風で崩れた。

でも田所は、歩き続ける。


私は、見ていた。

楢の木の陰から。

いや、違う。

私は木だった。

視点が、おかしい。私の目は地上から百六十センチの位置にあるはずなのに、今は五メートルの高さから見下ろしている。

木の幹に手を当てる。

樹皮が、私の皮膚のように感じられる。

境界が、溶けている。

『彼だね』

森が、囁く。

私の声で。

「うん」

私が、答える。

森の声で。

『許せない?』

「許せない」

『殺したい?』

「殺したい」

言葉が、自然に出てくる。

躊躇いがない。

恐怖もない。

ただ、静かな確信だけがある。


田所が、立ち止まった。

足元を見下ろしている。

道が、途切れている。

崖だ。三メートル下に、土砂崩れの跡。

「…マジか」

田所が呟く。

引き返そうとして——

蔦が、動いた。

田所の足首に巻きつく。

「うわっ!」

田所が転ぶ。膝を地面につく。

蔦が、這い上がってくる。

ふくらはぎ、太腿、腰。

「何だこれ、何だ——」

田所が蔦を引き剥がそうとする。だが蔦は彼の手首にも巻きつき、腕を、肩を拘束する。

「誰か、助けて——」

声が、森に吸い込まれる。

誰もいない。

私以外、誰も。


私は、歩き出した。

田所の前に、姿を現す。

「…柚木、さん?」

田所の顔が、歪む。

驚愕、困惑、そして——恐怖。

「どうして、ここに——」

「田所くん」

私の声は、落ち着いていた。

「久しぶり」

「た、助けて、これ、何——」

「覚えてる?」

私は、しゃがみ込んだ。

田所の目の高さに、顔を近づける。

「私が、あなたに頼んだこと」

田所の目が、泳ぐ。

「証言して、って。本当のことを、言って、って」

「あ、あれは——」

「あなたは黙ってた」

蔦が、田所の首に巻きつく。

「ひ、ぐ——」

「それどころか、嘘をついた」

蔦が、締まる。

田所の顔が紅潮する。目が血走る。

「ご、ごめ、ごめんなさ——」

「遅い」

私は、立ち上がった。

背を向ける。

「森が、裁くから」


田所の断末魔が、背中に突き刺さる。

骨が軋む音。

肉が裂ける音。

そして——

沈黙。

私は、振り返らなかった。

振り返る必要がなかった。

森が全てを見せてくれた。

田所の身体に蔦が食い込み、皮膚を破り、肋骨の間に入り込み、内臓を絡め取る。

彼の口から、白い菌糸が溢れ出す。

眼球が濁り、瞳孔が開ききり——

そして、静止。

田所は、森の一部になった。


おかしい。

私は、笑っていた。

声を出さずに、肩を震わせて。

お腹の底から、熱いものがこみ上げてくる。

快感だ。

復讐の、甘美な快感。

「ああ」

声が漏れる。

「ああ、ああ」

これが、私が求めていたもの。

痛みを、取り戻すということ。

奪われた尊厳を、力ずくで取り返すということ。

森が、私の快楽を吸い上げる。

そして、成長する。

木々の枝が伸び、葉が繁り、根が深く深く地面に潜り込む。

私たちは、強くなった。

次だ。

次は——


香西だ。

開発業者。牧村の手駆けとなって、村の土地を買収した男。

森が教えてくれた。

香西は、三日後に来る。

測量のために。

いいだろう。

待っている。


三日間、私は森で過ごした。

食事も、水も、必要なかった。

土の中の養分を、直接吸収できる。

木々の根と、私の血管が繋がっている。

光合成の糖分が、私の体内に流れ込んでくる。

これは、おかしいことだ。

人間は、こんなふうには生きられない。

でも私は、もう人間じゃないのかもしれない。

鏡がないから、自分の顔を見ることができない。

でも分かる。

皮膚の下を、白い筋が走っている。

爪が、少し緑がかっている。

髪の毛に、苔が生えている。

私は、変わりつつある。

それでも、怖くない。

むしろ、自然な気がする。

私は元々、ここに属していた。

土に、森に、この山に。

都会に出て、会社で働いて、人間のふりをしていたことの方が、不自然だったのかもしれない。


香西が来た。

四十代半ば、小太りの男。

作業服を着て、測量機材を担いでいる。

彼は一人ではなかった。

助手が二人、ついてきている。

若い男たちだ。

私は、迷った。

助手たちは、関係ない。

殺すべきは、香西だけ。

でも——

森は、区別しない。

森にとって、人間は全て同じ。

侵入者。

破壊者。

敵。

『どうする?』

森が、問いかける。

私は——

「香西だけ」

答える。

「他の二人は、見逃して」

『甘いね』

森が、笑う。

私の声で。

「お願い」

私は、懇願していた。

森に。

私自身に。

「これ以上、関係ない人を巻き込みたくない」

沈黙。

長い、沈黙。

そして——

『分かった』

森が、折れた。

「ありがとう」

私は、ほっとした。

まだ、人間性が残っている。

まだ、私は私だ。

そう、信じたかった。


香西たちが、測量を始めた。

集落の跡地に、杭を打ち込んでいく。

『ここが、メインロビーの予定地』

『駐車場は、あっちの斜面を削って』

『温泉は、もっと奥に掘削すれば出るはず』

香西が、助手たちに指示を出す。

私は、木の陰から見ていた。

タイミングを、計る。

香西が、一人になる瞬間を。


昼休み。

助手たちは、車に戻って昼食を取りに行った。

香西だけが、残った。

彼は煙草を吸いながら、スマートフォンを見ている。

今だ。

私は、森に命じた。

胞子を、放て。


風が、止んだ。

空気が、淀む。

そして——

木々が、震えた。

幹から、枝から、葉から。

無数の、白い粉が舞い上がる。

胞子だ。

目に見えないほど微細な胞子が、空気中に拡散する。

香西が、咳き込んだ。

「ごほっ、ごほっ——」

煙草を落とす。

「何だ、これ——」

胞子が、彼の口から、鼻から、肺の中へ入り込む。

香西が膝をつく。

呼吸が、荒い。

「くるし——」

彼の喉が、膨らみ始めた。

内側から、何かが成長している。

「ひ、ぐ、あ——」

香西が胸を掻きむしる。

シャツのボタンが弾け飛ぶ。

胸の皮膚が、裂ける。

血が流れる。

そして——

芽が出た。

本当に、植物の芽が。

香西の体内から、樹木の芽が顔を出した。

「あ、ああああ——」

香西が絶叫する。

芽は急速に成長する。

幹になり、枝になり、葉をつける。

香西の身体が、養分になっている。

彼の肉が痩せ細り、骨が露出し——

でも、まだ生きている。

意識がある。

痛みを、感じている。


私は、吐いた。

胃の中身——何も入っていないはずなのに——緑色の液体が、口から溢れた。

「やめて」

私は呟いた。

「殺して、早く、殺してあげて」

でも森は、聞かなかった。

香西の苦しみは、栄養だった。

恐怖と痛みが、森を育てる。

樹木は成長し続ける。

香西の身体を突き破り、四メートル、五メートル——

そして、ようやく。

香西の動きが、止まった。

彼は、完全に樹木になった。

幹の中に、人間の形が透けて見える。


助手たちが、戻ってきた。

「香西さーん、弁当買ってきました——」

そして、絶叫。

二人は、逃げた。

車に飛び乗り、エンジンをかけ、タイヤを軋ませて走り去る。

私は、その場に立ち尽くしていた。

香西の——だったもの——を見上げながら。


夜。

私は、香西の樹を調べた。

幹に触れる。

温かい。

まだ、生命活動をしている。

樹皮の隙間から、何かが覗いている。

目だ。

香西の、目だ。

まだ、生きている。

意識が——

「ごめんなさい」

私は、謝った。

「こんなつもりじゃ、なかった」

樹が、軋んだ。

風もないのに。

幹の中から、声が聞こえた気がした。

『たす……けて……』

違う。

これは、幻聴だ。

香西は、もう死んでいる。

死んで、いるはずだ。

「違う、あなたは悪い人だった」

私は、自分に言い聞かせる。

「村を、売った」

「お金のために」

「私の、家族の、命を——」

嘘だ。

全部、嘘だ。

私は、震える手で携帯電話を取り出した。

圏外。でも、キャッシュされたニュース記事が残っている。

検索する。

「香西建設」

記事が、出てきた。

三年前の記事。

『香西建設、社長の娘が誘拐される。身代金五千万円要求』

次の記事。

『香西建設、銀行から緊急融資。資金繰り悪化か』

そして——

『香西建設、牧村コンサルタントと業務提携』

繋がった。

香西は、脅されていた。

娘を人質に取られて。

牧村に、協力させられていた。

「嘘」

携帯が、手から滑り落ちる。

「嘘、嘘、嘘——」

香西は、被害者だった。

私と、同じ。

それなのに、私は——


森が、笑った。

『知らなかった?』

「黙れ」

『でも、もう遅い』

「黙れ!」

私は、樹を殴った。

拳が裂ける。血が流れる。

でも、痛くない。

痛いのは、胸だ。

心臓が、締め付けられる。

「私は、正しいことを——」

『正しい?』

森が、囁く。

『復讐が?』

『殺人が?』

『あなたは、ただの——』

「黙れ、黙れ、黙れ!」

私は、走った。

森の奥へ。

逃げるように。

でも、逃げられない。

森は、私だから。

私は、森だから。

どこへ行っても、香西の悲鳴が聞こえる。

樹木の、中から。

土の、中から。

私の、中から。


翌朝。

私は、小川のほとりで目を覚ました。

水面に、顔を映す。

目の下に、隈ができている。

髪は、完全に苔に覆われている。

皮膚は、緑がかっている。

私は、もう人間に見えない。

でも——

まだ、泣くことはできた。

涙が、頬を伝う。

水面に、落ちる。

波紋が、広がる。

私は、化け物になった。

正義のためじゃなく。

ただ、憎しみのために。

「やめたい」

呟く。

「もう、やめたい」

でも——

森が、答える。

『まだ、終わってない』

そうだ。

まだ、牧村が残っている。

全ての元凶。

あの男を殺せば——

殺せば——

何が変わる?

香西は、戻ってこない。

田所も。

拓海も、母さんも、父さんも。

誰も、戻ってこない。

「それでも」

私は、立ち上がった。

「やるしかない」

もう、後戻りはできない。

私は、殺人者だ。

二人、殺した。

一人は快楽のために。

一人は、間違いで。

どちらも、許されない。

だったら——

最後まで、やり遂げる。

牧村を、殺す。

そして、私も——

森に、食われる。

それが、罰だ。


森が、震えた。

木々が軋み、葉が囁き、土が呼吸する。

そして、私に告げる。

誰かが、来る。

村に、近づいている。

牧村——じゃない。

別の、誰かが。

女性だ。

知っている匂い。

懐かしい、温かい匂い。

石鹸と、紅茶と——

「まさか」

私は、走った。

村の入り口へ。

そして——

見た。

白髪の、小柄な女性。

七十代。

杖をついて、ゆっくりと鳥居をくぐろうとしている。

「坂井、さん?」

私の声が、震える。

女性が、顔を上げた。

「あら——梢ちゃん?」

坂井キヨ。

村の、元保育士。

私が五歳のとき、母さんが入院して。

三ヶ月間、坂井さんが私を預かってくれた。

絵本を読んでくれた。

お菓子を作ってくれた。

泣いたとき、抱きしめてくれた。

私の、もう一人のお母さん。

「どうして、ここに——」

「お墓参りよ」

坂井さんが、微笑む。

「みんなの。それと、あなたのお母さんの」

彼女は、災害の日、村にいなかった。

だから、助かった。

「梢ちゃん、生きてたのね。よかった——」

坂井さんが、近づいてくる。

私に、手を伸ばす。

「ダメ!」

私は、叫んだ。

「来ないで、坂井さん、来ないで!」

でも——

遅かった。

森が、反応した。

『あの日、そこにいた者』

森の声。

私の声じゃない。

『村を、壊した者たち』

「違う、坂井さんは関係ない!」

『一緒にいた』

そうだ。

災害の前日、坂井さんは村に来ていた。

牧村と、一緒に。

牧村が坂井さんを車に乗せて、村を案内していた。

開発計画を説明するために。

坂井さんは、土地の所有者の一人だった。

でも、彼女は反対した。

『この森を、壊さないで』

そう言って、土地の売却を拒否した。

だから——

牧村は、彼女を連れ出した。

災害の日に、村から。

坂井さんを、生き証人にするために。

『開発に反対していた人も、助けた』

そうアピールするために。

坂井さんは、利用されたんだ。

でも——

森は、知らない。

森は、理解しない。

森にとって、坂井さんは——

『敵』

蔦が、地面から這い出す。

「やめて!」

私は、駆け出した。

坂井さんの前に、立ち塞がる。

「この人は、違う!」

蔦が、私の足に絡みつく。

「お願い、やめて、やめて!」

でも、蔦は止まらない。

私を、避ける。

私の身体を迂回して、坂井さんに向かう。

「梢ちゃん、何が——」

坂井さんの足首に、蔦が巻きつく。

「ひっ」

坂井さんが、転ぶ。

杖が、宙を舞う。

「坂井さん!」

私は、蔦を引き剥がそうとした。

でも、蔦は私の手をすり抜ける。

私の命令を、拒否する。

森は、もう私の制御下にない。

「お願い、お願い、やめて——」

蔦が、坂井さんの身体を這い上がる。

首に、巻きつく。

「梢、ちゃん——」

坂井さんが、私を見た。

怯えてない。

悲しそうに、微笑んでいる。

「大丈夫、よ——」

「嫌だ、嫌だ、嫌だ!」

私は、泣き叫んだ。

「殺さないで、この人だけは、殺さないで!」

でも——

蔦が、締まる。

坂井さんの首が、軋む。

「ごめん、なさい——」

坂井さんが、呟いた。

「守って、あげられなくて——」

そして——


沈黙。

坂井さんの身体から、力が抜ける。

蔦が、彼女を土の中に引きずり込む。

ゆっくりと。

まるで、抱擁するように。

私は、その場に崩れ落ちた。

「あ、あ、ああああ——」

声にならない悲鳴。

坂井さんの身体が、完全に土に沈む。

地面が、平らになる。

何事もなかったかのように。

でも、私は知っている。

土の下で、坂井さんの身体が菌糸に侵食されている。

森の、一部になっている。

私が、殺した。

私の、手で。

「嘘だ」

呟く。

「嘘だ、嘘だ、嘘だ——」

でも、現実だ。

坂井さんは、死んだ。

私のせいで。


森が、囁く。

『ごめんね』

私の声で。

子どもみたいな、無邪気な声で。

『でも、仕方なかったの』

「黙れ」

『だって、敵だったから』

「黙れ!」

『あなたが、そう教えたんでしょ?』

私は——

何も、言い返せなかった。

そうだ。

私が、教えた。

憎しみを。

復讐を。

森に、全部教えた。

そして森は、学習した。

憎しみだけを。

復讐だけを。

正義も、慈悲も、愛も——

森は、知らない。

「私が、悪かった」

私は、土に額をつけた。

「私が、間違ってた」

「坂井さん、ごめんなさい」

「ごめんなさい、ごめんなさい——」

涙が、土に染み込む。

でも、誰も答えない。

坂井さんは、もういない。

私は、一人だ。

いや——

森が、いる。

私を、包んでいる。

私の、一部になっている。

もう、離れられない。


どれくらい、そうしていただろう。

顔を上げたとき、日が傾いていた。

私は、立ち上がった。

もう、涙は出ない。

もう、何も感じない。

空っぽだ。

でも——

まだ、終わっていない。

牧村が、残っている。

全ての、元凶が。

「明日」

私は、呟いた。

「明日、牧村が来る」

森が、応える。

『分かってる』

「殺す」

『もちろん』

「でも、その後——」

私は、森に告げた。

「私も、殺して」

森が、沈黙する。

長い、沈黙。

そして——

『いいよ』

森が、答えた。

優しく。

まるで、子守唄のように。

『一緒に、なろう』

『ずっと、ずっと』

私は、頷いた。

それが、罰だ。

坂井さんへの、せめてもの——


夜。

私は、楢の木の下で眠った。

拓海が、好きだった場所。

夢を見た。

拓海が、笑っている夢。

『梢、将来ここに家建てようか』

『いいよ』

夢の中の私は、答える。

『二人で、ずっとここにいよう』

拓海が、私の手を握る。

温かい。

『約束だよ』

私は——

泣いていた。

夢の中でも、泣いていた。


目を覚ますと、朝だった。

最後の日。

牧村が、来る。

私は、準備をする必要はなかった。

森が、全て準備してくれている。

罠を。

武器を。

墓を。

私と、牧村の、墓を。

待つだけだ。

森の、奥で。

終わりを。


第三章:侵食

牧村が来たのは、正午だった。

黒いSUV。一台だけ。

彼は、一人だった。


私は、楢の木の幹に手を当てていた。

樹皮と、私の皮膚の境界が曖昧になっている。

どこまでが木で、どこからが私なのか。

もう、分からない。

牧村の車が、村の入り口で止まる。

エンジンが切れる。

ドアが開く。

足音。

一歩、一歩、近づいてくる。

私の心臓が、速くなる。

いや——

これは私の心臓じゃない。

森全体の、鼓動だ。

木々が、脈打っている。

土が、呼吸している。

森が、興奮している。

獲物が、来た。


牧村は、スーツを着ていた。

灰色のスーツ。白いシャツ。紺のネクタイ。

五十代半ば。髪は薄くなり、腹が出ている。

でも、目は鋭い。

彼は、集落跡を見回した。

香西の樹を見つける。

近づく。

触れる。

「…何だ、これ」

彼の声が、森に響く。

牧村は、樹の幹の中の人影に気づいた。

顔が、強張る。

「香西、か?」

彼は、後ずさる。

携帯電話を取り出す。

圏外。

「クソ」

牧村は、車に戻ろうとする。

でも——

道が、ない。

来た道が、蔦に覆われている。

「何だ、何が起きて——」

彼の足元で、土が動く。

牧村が、飛び退く。

地面から、白い菌糸が這い出す。

「誰だ、誰がいる!」

牧村が、叫ぶ。

私は——

姿を現した。


木の陰から、歩み出る。

牧村が、私を見た。

数秒、彼は理解できなかった。

そして——

「柚木、さん?」

彼の声が、裏返る。

「生きて——いや、あなた、それ——」

牧村は、私の姿に絶句した。

そうだろう。

私は、もう人間に見えない。

髪は完全に苔に覆われ、緑の髪飾りのようになっている。

皮膚は樹皮のように硬化し、亀裂が走っている。

目——私の目は、まだ人間のものだろうか。

鏡がないから、分からない。

でも、牧村の表情を見れば想像できる。

恐怖。

嫌悪。

そして——わずかな、罪悪感。


「久しぶりですね、牧村さん」

私の声は、落ち着いていた。

不思議なほど、冷静だった。

「あなたに、会いたかった」

「柚木さん、これは一体——」

「森が、怒ってるんです」

私は、言った。

「あなたが、壊したから」

「何を言って——」

「村を。家族を。私の人生を」

牧村の顔が、青ざめる。

「あれは、事故だ。誰も予測できなかった——」

「嘘」

私は、一歩近づく。

牧村が、一歩下がる。

「あなたは、知っていた」

「私の報告書を、読んだはずです」

「土砂災害のリスク。森林の保水力低下。全部、書いてあった」

「それを、あなたは握り潰した」

牧村は、何も言えなかった。

ただ、後ずさる。

「開発を優先した」

「お金のために」

「そして——」

私の声が、震える。

「証拠隠滅のために、私を犯罪者にした」


牧村の背中が、木に当たった。

逃げ場がない。

「すまない」

彼は、言った。

「本当に、すまなかった」

「柚木さん、君は優秀だった」

「でも、俺には選択肢がなかったんだ」

「会社の存続がかかっていた。借金が——」

「黙れ」

私は、言った。

「言い訳は、聞きたくない」

蔦が、地面から這い出す。

牧村の足首に、絡みつく。

「待て、待ってくれ、頼む——」

「田所も、そう言ってました」

蔦が、牧村の腰まで這い上がる。

「香西も、そう言ってました」

胸まで。

「坂井さんも——」

私の声が、途切れる。

坂井さん。

優しかった、坂井さん。

私が、殺した。


牧村の悲鳴が、森に響く。

蔦が、彼の身体に食い込む。

肋骨が軋む。

でも——

私は、何も感じなかった。

快楽も、悲しみも、罪悪感も。

空っぽだった。

ただ、見ている。

牧村の身体が蔦に呑み込まれ、土の中に引きずり込まれていく様を。

彼の手が、最後まで地面を掻く。

爪が剥がれる。

指が折れる。

そして——

沈黙。


終わった。

復讐は、完了した。

田所。

香西。

牧村。

全員、森に還った。

でも——

何も、変わらない。

拓海は、戻ってこない。

母さんも。

坂井さんも。

私は、ただ——

殺しただけだ。


「終わったね」

森が、囁く。

私の声で。

「うん」

私は、答える。

森の声で。

もう、区別がつかない。

どちらが私で、どちらが森なのか。

「約束、覚えてる?」

森が、問う。

「覚えてる」

私を、殺すという約束。

森と、一つになるという約束。

「怖い?」

「怖く、ない」

嘘だ。

怖い。

消えるのが、怖い。

でも——

もう、いい。

生きている意味がない。


足元の土が、動いた。

菌糸が、私の足首に絡みつく。

でも、痛くない。

むしろ、懐かしい。

帰ってきた、という感覚。

菌糸が這い上がる。

ふくらはぎ、太腿、腰。

私は、抵抗しなかった。

目を閉じる。

これで、いい。

これで——


痛みが、走った。

胸に。

鋭い、痛み。

目を開ける。

菌糸が、私の胸を貫いていた。

心臓に、到達している。

「あ——」

声が、出ない。

血が、口から溢れる。

でも、赤くない。

緑色だ。

樹液のような、緑色の液体。

私は、もう人間じゃない。


視界が、歪む。

でも、暗くならない。

むしろ、明るくなっていく。

視点が、増えていく。

一つの目では、空を見ている。

別の目では、土の中を見ている。

もう一つの目では、森の奥を見ている。

私は——

森になっている。

木々の全てが、私の目になっている。

根の全てが、私の手になっている。

境界が、完全に消えた。


梢ちゃん。

誰かが、呼ぶ声。

梢。

拓海?

梢さん。

母さん?

こずえ。

坂井さん——

違う。

これは、記憶だ。

森が、吸収した記憶。

死んだ人々の、記憶。

全部、ここにある。

森の中に。

私の中に。


意識が、拡散する。

「私」という感覚が、薄れていく。

名前が、思い出せない。

何だっけ。

私の、名前。

ゆき——

こずえ——

違う。

柚木梢。

そうだ。

私は——

私は——


誰?


(視点崩壊)

木が見る土が呼吸する根が這う菌糸が記憶する私は森森は私境界はない全てが一つ痛み怒り悲しみ喜び全部混ざる誰の感情誰の記憶分からないもう分からない

田所が笑う香西が泣く坂井さんが歌う拓海が手を振る母さんが呼ぶ父さんが——父さんはどこ土の中探す見つからない

牧村が沈む叫ぶ許せ許さないどっち分からない憎いでも哀れでも何も感じない空っぽ満たされている矛盾している

私は誰柚木梢?違う森?違う全部?そう全部

あなたも

復讐したい?


エピローグ

森は、待っている。

美咲が最初に気づいたのは匂いだった。腐葉土でも獣臭でもない。甘ったるくて、それでいて金属的な——血と蜜を混ぜたような匂い。

「…こんな道、あったっけ」

彼女は、迷っていた。

会社から逃げ出して、新幹線に飛び乗って、気がつけばここにいた。

山の中。

誰もいない、静かな森。


足元の土が、濡れている。

雨は降っていないのに。

美咲は、しゃがみ込んだ。

指先で触れる。

ぬるい。

脈打っている——そんな錯覚。

『あなたも』

声がした。

女の声。若い。それでいてひどく古い。

『復讐したい?』

美咲は、息を呑んだ。

「誰——」

『私が、教えてあげる』

土の中で、何かが蠢いた。

白い糸。

菌糸。

美咲の指先に触れる。

温かい。

心地いい。

「これ、何——」

『痛みを、取り戻す方法を』

菌糸が、爪の隙間に入り込む。

美咲は、引き剥がそうとした。

でも、遅い。

菌糸は既に、彼女の血管に入り込んでいる。


森が、彼女を抱きしめる。

優しく。

母親のように。

『大丈夫』

声が、囁く。

『あなたは、悪くない』

美咲の目から、涙が溢れる。

「私、私は——」

『分かってる』

『全部、分かってる』

森は、知っている。

美咲が受けた屈辱を。

理不尽を。

痛みを。

全部、知っている。

なぜなら——


森の奥。

一本の楢の木。

幹の中に、人の形が透けている。

女性。

若い女性。

目を閉じて。

眠っているように。

でも、眠っていない。

彼女は、森そのものになっている。

木々の記憶。

土の意識。

菌糸の夢。

全てが、彼女だ。

彼女の名前は——

もう、誰も覚えていない。

でも、彼女の怒りは残っている。

彼女の痛みは残っている。

そして——

彼女の誘いは、続いている。


美咲が、立ち上がった。

足が、ふらつく。

でも、倒れない。

森が、支えている。

「誰を——」

彼女は、呟く。

「誰を、殺せばいい?」

森が、答える。

『あなたが、決めて』

『私は、手伝うだけ』

美咲の目が、虚ろになる。

そして——

笑った。

初めて、心の底から笑った気がした。


森の外。

国道沿いのコンビニ。

駐車場に、一台の車が止まる。

男が降りてくる。

四十代。スーツ姿。

美咲の、上司だ。

彼は、煙草を吸いながらスマートフォンを見ている。

画面には、SNSの投稿。

『部下の女が失踪www メンヘラ乙wwww』

彼は、笑っている。


森の中。

美咲が、歩き始めた。

森の外へ。

人間の世界へ。

狩りに。

彼女の手のひらから、白い菌糸が伸びている。

爪の先が、少し尖っている。

目が——

少しだけ、緑がかっている。

でも、まだ人間に見える。

まだ、気づかれない。


森は、待っている。

次の、怒れる者を。

次の、痛める者を。

そして——

森は、成長し続ける。

一人、また一人。

怒りを吸収して。

痛みを栄養にして。

世界中に、根を伸ばす。


楢の木の幹の中。

眠る女性の唇が、わずかに動く。

声にならない、呟き。

『ごめんなさい』

『でも、止められない』

『もう、止められない』

そして——

森は、記憶する。

怒りだけを。

永遠に。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

森が、私を喰う日 ソコニ @mi33x

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ