第2話 そりゃさ、


「エッチがしたい!!! エッチがしたい!!! お風呂一緒に入るならぜっったい、エッチがしたいッ!!!!!!」

「落ち着け落ち着け」


 ちょいギャルに制され、少し落ち着く温太郎。

 それでも、一度出てきた本音は簡単には引っ込まず……。


「控えめに言ってめっちゃエッチしたいんだよな……エッチがさ」

「控えめとめっちゃの相性悪くない?」

「これでも控えてるつもりなんだよ」

「……そっかー」


 具体的じゃないだけ、すごく控えている。


「ってかいつからトラ子のこと好きだったん?」

「いや、好きとかじゃない」

「え、どゆこと」

「生まれてからずっと一緒にいる幼なじみなんだぞ? 今さら異性として……っていうのはそんなに簡単なことじゃない」

「……とゆうと?」

「とはいえ、あんな可愛くておっっきな体してて……男としてエッチなことしたくなるのは当然で健全で宿命だろ」

「やっっば」


 ケラケラと笑う志津香。


「タローはしっかりしてると思ってたんだけどなー」

「それは間違ってない。ただ……思春期の男としてこの方が正常だと俺は思う」

「ほー」

「アニメとかでありがちな、手出さない男主人公理性バグってて話入ってこないだろ。普通に」

「それは激しく同感」


 アイツら全員ち〇こがない。情けない。見てられない。消えてしまエ!


「ならお風呂入ってエッチしちゃえば?」

「……はぁ。俺がどれだけその考えの前を通っては心を痛めてることか……気楽に言うんじゃねぇぞ!!!」

「えーごめん」

「動き間違えて今の関係崩したくないんだよ」

「トラ子にそんなつもりなかったら最悪だもんねー」

「家族ぐるみの付き合いだし、もはや俺と玲子だけの問題じゃないんだ」

「はー……ってか中学のときはどうしてたん?」

「そのときは家に親いたし、風呂一緒に入るって発想はなかったんだよ。まぁ、目の前で着替えだすとか全然あったけど」

「トラ子すげー」

「でも今はふたりっきりでいること多いし、ほぼ一緒に暮らしてるみたいなもんだし……一緒に入った方が節約とか言うし……なぁ?」

「なぁって。知るか」


 志津香が足を組み、「んー」と唸る。


「……タローの悩みはよくわかった」

「ほんとか?」

「ほんとほんと。そのうえで、アタシが大事だなーって思うのは……やっぱりトラ子の気持ちだよね」

「というと?」

「タローと一緒にお風呂入るのが、小ガッコーのときみたいに普通だと思ってるのか」

「本命だな」

「それともトラ子の貞操観念がバグってるのか」

「最悪だな」

「または、トラ子なりのタローに対する……なのか」

「……な、なるほど」


 志津香の言う通り、考えていなかっただけで可能性は色々ありそうだ。


「まーアタシ的には? さっさとエッチしちゃえばって感じなんだけど」

「エッチはしたい」

「わかったから」


 んんっ、と咳払いする志津香。



「そこを見極めるのが、今タローがすべきことなんじゃない?」



 ……さすがは志津香。

 温太郎と玲子と中学の頃から仲良くしていただけでなく、この手の経験豊富さが光りまくっている。


「あぁ……そうだな」


 普段はふしだらな志津香だが、結局こういうときに頼りになる。

 三矢志津香とはそういうちょいギャルなのだ。


「でも、悠長なこと言ってらんないかもよー」

「なんでだよ」

「ほら、トラ子って入学してから目立ちに目立ちまくってるでしょ? 実際かなーり人気だし」

「もう十人くらいから告白されたって聞いた」

「正確には十八」

「え十八。やば」

「それだけならいいんだけどさー」


 含みのある言い方で、志津香が足をぷらぷらさせる。


「名取先輩って知ってる? 三年の」

「名取? んー……どこかで……」

「ほら、NTR漫画のデカい不良の先輩みたいなヤツ」

「あの名取か!」

「そう、その名取。が、トラ子に目つけてるらしーよ」

「え”」

「これ、エロ漫画だったらさー」




「――?」




 と、二人の目の前で首をかしげる玲子。


「うおぉっ!」

「やっほートラ子」

「やっほー三矢」


 改めて、温太郎と志津香を交互に見る玲子。

 温太郎は話が話なだけにあたふたし。

 志津香は「しょうみ別にどっちでも」なので動じず。


 よって……。



「なんかエッチなことでもしてんの?」



 してるか!!!!!!!










 ……なんて、少し前は温太郎も実に悠長にツッコめたわけだが。


「やっぱ虎田ちゃんかわいーーー。マジタイプなんだけど。あんまいねーしな? こーゆーカンジの子。しかも高一で……ほぉぉ……」

「……はぁ、まぁ」


 NTR漫画のデカい不良の先輩みたいな名取を中心に、校舎裏で玲子を囲むガラの悪そうな男たち。


 エロ漫画なら……これがいわゆる、エロ漫画なら……。
























「オレ、虎田ちゃんのことケッコー好きなんだけど。マジで大マジ」

「…………はぁ、あぁ」

「………………え、さっきからどーゆー反応?(困惑)」


 どうする! 温太郎!!!

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