第9話
アリシアはなんとか今晩中に王都に帰れる馬車を見つけて安堵した。
(よかった……。今日中に帰れなかったら明日の朝は遅刻確定でした……。セシルさんのお説教は長いですし、なんとか回避しなければ)
アリシアが馬車のキャビンに乗り込むと後ろから声が聞こえた。
「おーい。待ってくれー。俺も乗る」
オーリーは半ば強引にキャビンへと乗り込んできた。
端へと追いやられたアリシアは眉をひそめた。
「別の馬車で帰ればいいじゃないですか」
「馬車代くらい奢ってくれよ。助けてやったんだし」
「そんな条件を飲んだ覚えはありません」
するとオーリーはフッと笑った。
「お前、あの時煙玉使ったのは俺を呼ぶためだったんだろ? 廃墟からあそこまでの移動時間も計算してたってわけだ」
「……なんのことでしょう」
アリシアがとぼけるとオーリーはニッと笑った。
「わざわざ来てやったんだから馬車代くらい出してくれもいいだろ。でないとガキに盗賊退治の仕事振ったってギルドで言いふらすぞ?」
「……仕方ないですね」
オーリーは嬉しそうにしながら腰に差していた剣を奥に置いた。
「お。ラッキー。じゃあ、俺は寝るから着いたら起こしてくれ」
オーリーが横になるとアリシアの膝に頭を乗せた。
アリシアはじとりと湿った目で見下ろした。
「……なにをしてるんですか?」
「弱みにつけ込んでる。じゃ、おやすみ」
そう言うとオーリーは本当に眠ってしまった。
アリシアは困りながらもどこか照れた様子でため息をつき、子供みたいなオーリーの寝顔を見つめた。
「……今日だけですよ」
受付係のアリシアさんは面倒くさい 歌舞伎ねこ @yubiwasyokunin
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