第8話

 盗賊が捕まったと知ると町は大騒ぎだった。

 武器屋の店主が嬉しそうにオーリーの頭をわしわしと撫でた。

「兄ちゃんありがとうよ! いやあ、冒険者にも良い奴はいるもんだなあ!」

「いてえよ! これから寝るんだから離せって!」

 そう言いながらオーリーは歓迎されて満更でもない様子だった。

 アリシアはそんなオーリーを遠巻きに見ていた。

 するとコリンがしょんぼりとしながらアリシアの隣にやって来た。

「随分怒られたみたいですね」

「うん……。でもいいんだ。これでまたお母さんの薬も入ってくるし、みんなも助かったから」

 オーリーを見るコリンの目は輝いていた。

「決めた。オレ冒険者になる。だってみんなあんなに嬉しそうなんだもん」

「……やめといた方がいいですよ」

「え? なんで?」

「私の業務が増えますから」

 面倒くさがるアリシアにコリンは苦笑した。

「受付嬢って大変なんでしょ? じゃあなんでお姉ちゃんは辞めないの?」

 アリシアは胴上げされて嬉しそうにするオーリーを見つめて言った。

「……そうですね。辞めようと思ったことは何億回もありますが、それでもクエストを成功させた冒険者の顔を見ると、もう少し続けようと思えるんです」

 コリンが感心しているとアリシアは嘆息した。

「まあ、それ以外は死ぬほど面倒ですけど」

「あはは……」

 アリシアは踵を返した。

「では私はこれで」

 アリシアはそう告げると馬車乗り場に向かった。

 コリンは面白がりながら手を振る。

「またね。面倒くさがりのお姉ちゃん!」

 アリシアの姿が見えなくなるまでコリンは手を振り続けた。

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