第10話 帰還への旅立ち

 支度した荷物を背負い、山賊の拠点から出発する準備を整える。

 太陽が頭上に来ていることから恐らくまだ正午ごろと推測できたので、暗くなる前にできるだけ移動することにした。


「それじゃあ、お世話になりました……」


「お前ら、俺たちのこと追いかけてきたら『コレ』だからな!!」


 自分の能力で出したノートを指さし、いつでもヤれるぞとアピールする。


「そういえば、お前ら名前は?」


「あ、サカイ 恭弥キョウヤです。」


「おい!!!!こんなヤツらに名前を教えたら!」


「あ!」


 しまった、と声は出さずとも顔に出ていた。


「ああ、もちろんお前らのことはこれ以上追いかけ回さないから心配しないでくれ。単純に名前を覚えておきたかったんだ。」


 山賊たちへ丁寧に接する必要なんてないと思いつつも、礼儀を欠かさずに対応する若者を見て自分を少し恥ずかしく感じた。


「……暮落クレオチ 才伍サイゴだ。それじゃ。」


 グルグルに縛った4人を尻目に、山賊たちの拠点を後にした。


「……そうか、やっぱり変な名前だな!次会ったらまた勧誘するからな〜〜!!」


「風邪、引くんじゃねぇぞ〜〜!!」


「魔獣には気をつけるんだよ〜〜!!」


「ばあちゃんにあったら『俺が元気だ』って伝えてくれよ〜〜!!」


「うるせぇぇぇぇぇ!!!!!!!」


「お邪魔しましたー!!」


 最後まで迷惑な奴らだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る