第11話 最初の目的地

「てか俺、まさか本当にノートを作るだけの能力で異世界転生させられたのか?」


「こういうのって”転生”というよりか”転移”って言うんじゃないですか?」


「それは今結構どうでもいいだろ……」


 山賊の言っていた大都市『トライデア』を目指し、川沿いを歩きながら青年と話す。


「サイゴさん、ノートを創り出すって言っておきながら炎出してたじゃないですか。ノートに名前書くだけで人殺せるってまるでデスノ──」


「あれは俺の能力の制約っぽいやつで、多分普通の炎だ。殺せる訳じゃない。」


「え?じゃあ、あれは……」


「俺の創ったノートはどうやら人に渡すと燃えて消えるらしいんだ。

 あの男の近くに予め作って置いたノートを投げておいて、譲渡を宣言することで燃やした。」


 ワーウルフに『見せて”あげる”』と宣言していたタイミングでノートから発火。

 運良く服に燃え広がったことで派手な演出が出来たのだ。


「まあ、今回は色々偶然が重なっただけだから早々上手くいくことはないだろうな。」


 普通の炎とバレてしまえば簡単に対処されてしまうだろう。


「というか、キョウヤ君も何かの能力だろ?あの怪力。」


「僕の能力はよく分からないんですけど、『逆境に強くなる』能力みたいなんです……」


「なんだそりゃ?」


「こんなのでした……」


 ノートに能力の詳細を書き出した。


《逆境》

 ・追い込まれるほど、能力が倍加する。


「……これだけ?」


「はい、本当になんのこっちゃって感じで……」


 自分の《ノート創り》能力に比べて随分大雑把な説明だ。

 筋力が上がるのか、頭が良くなるのか、何にどれくらい追い込まれたら発動するのかさっぱり分からない。


「まあ少なくとも俺の『変な力』よりは役立ちそうじゃないか?

 さっきも獅子奮迅って感じだったし。」


「そうだと嬉しいんですけどねぇ……」


「そもそもピンチに強い力なんて主人公みたいでかっこいいだろ。

 少なくとも《ノート創り》よりかは。」


 意味不明な能力を渡された自分が既に嫌になりつつある。


「そんなことより『トライデア』には何の目的で行くんですか?

 僕たち異世界から帰るつもりですけど、手がかりゼロじゃないですか。」


「『図書館』だ。そこで何でもいいから情報を集める。」


「『図書館』ですか?」


「この世界がどのくらいの文明や技術を持っているか分からないが、あんな山賊でも『筆記用具』は持っていた。ある程度は気軽に文章や絵を残せるだけの文明、製本技術くらいはあるだろう。『図書館』に行けばこの世界の仕組みや構造がある程度把握出来ると思うんだ。」


「確かに手がかりが見つかる可能性ありそうですね!

 でも僕たち異世界の本読めるんですかね?」


「…………!!」


 痛いところをつかれた。


「……山賊たちとも会話できたし、いけるんじゃない?」


「それもそうですね……!!」


 出来なかった時のことを考えてもしょうがないのでひたすら川沿いを歩く。

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