第8話 ノートを創り出す能力
「おい、狼男!!!仲間が殺されたくなかったら今すぐ降伏しろ!!!」
両足が縛られながらも大きな声で呼び止める。
「何言ってんだ?」
当然の反応。山賊の仲間たちは手の届く範囲にはなく、武器や道具も持っていない。
「どう見てもお前は魔法使いじゃなさそうだし、殺せる状況には見えないんだが……」
「お前、自分が言ったこと忘れてる訳じゃないよな?」
「……まさか『変な力』か?」
少し考え込んだ後、納得したように言った。
「そうだ!俺の力を使えば、お前らの仲間を即座に殺せるぞ!殺されたくなかったら今すぐ武器を置いて手を後ろに組み、着てる服全部脱いで有り金と食い物全部置いていけ!!!」
「大きく出たな。」
臨戦態勢だった狼も流石に笑みがこぼれてしまった。
「お前、流石にそんな嘘で騙されるヤツはいないだろう!
いくら『変な力』でもそんなこと出来るはずがない。」
全て見通しているかのようだ。
「異界人とはいえ、直接命を奪えるような力があるとは思えない!
追い詰められてデマカセを言っているだけだろう!
そもそも殺せるような力があるなら、それを使って俺を殺せばいいだけの話だからな!!」
「確かにそう見えるかもな、それじゃあ証拠を見せてやったら少しは納得するかな……?」
「【ノートブック】!!!」
大声で唱えると自分の手元に新品の大学ノートが現れた。
「俺の能力は『ノートに名前を書いた者を殺害する力』なんだ。そこで寝てる男で試してやる。」
予め足元の石で傷つけておいた、指から出る血液で『デルシンキ』の名前を走り書きで記し、狼男に見せつける。
「ハッ!苦し紛れにしてもみっともないな!」
「これから見せてあげるから覚悟しろよ!」
そう叫んだ瞬間、倒れ込んでいた木こりの背中に突如炎が上がる。
「あ、あぁぁあぁあ!?なんじゃこりゃ、アツい!!?」
体が痺れて動けない木こりの衣服に燃え移り、全身が炎に包まれ始めた!
「デルシンキ!!!」
「今ならまだ取り消せるぜ?仲間の命が惜しかったら──」
「降参する。だからどうかデルシンキを殺さないでくれ……」
狼男は持っていた武器を即座に捨て、地面に膝をつけて深々と頭を下げた。
驚くほど早い降伏だった。
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