第7話 変な力

 このままでは恐らく、あの青年が殺される。


「アイツが死んだら次は……」


 絶望的な状況で、自分が生き残るためにできることがないか必死に辺りを見渡す。


 足元の縄は手で解けないようガチガチに結ばれている。

 倒れている山賊たちの武器を手に取ろうにも距離があるため届かない。

 手の届く範囲に使えそうな道具もない。


 手詰まりかと諦めかけたその時、あの青年の言葉を思い出した。


『殺されると思ったら急に頭の中に……』


「頭の中に、何かが浮かんだのか…?」


 そもそもあの青年が戦っている時、自身の力に驚いていた。

 つまりはこの世界に来てからいきなり力を手に入れた可能性がある。


 更に、あの狼男は異界人に『変な力』があるとも言っていた。


「その可能性に賭けるしかない!!」


『変な力』に意識を集中させて目を閉じる。

 その瞬間、脳裏に今ままで知らないはずの情報が流れ込んできた。


《■■》

 ・ノートブックを創り出す能力

 ・創り出したノートは自由に出し入れできる

 ・ノートは他人に譲渡すると焼失する


「何だこの変な力!!??」


 今の状況じゃあまりにも役たたずな能力に思わず驚愕してしまった。

 そもそもどういう意図の能力なのかすら分からない。


 しかし、こんな状況でも頼りにできるのはこの力に頼るしかない。

 必死に思考を巡らせる。


「……これしかねぇーっ!」


 一か八か、生き残りをかけた博打が始まった。

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