5. タダでラーメン
国立公園の入口には一時間半で到着した。おじいちゃんは「俺のエアライダーの腕もなまってねえな」と笑う。
「エアライダー、僕も操縦してみたい」
「おう。運転にはちょっとした技術ってのが必要なんだ。例えば別のエアライダーとすれ違う時に注意を……」
「おじいちゃん、僕まだ免許取れないから……」
会話しながらも、肩にずしりとした重みを感じる。ホゴタが持ってきてくれた防刃チョッキは少し大きいけれど「これがないと危険です」なんて言われてしまえば、脱ぐことはできない。
入口を入ると、雑草で見えなくなりそうな道を進んでいく。
始めのうちはこれからどんな道が待ち受けているのだろうと緊張していたけれど、おじいちゃんとホゴタとしゃべりながら歩いていると、緊張感は少しずつ解けていった。
道はだいたいが平坦で、脇に背の高い木が生い茂っているところもあれば、ちょっとした芝生広場のように整備されているところもあった。木を登る大きめのリスはかわいかった。キラキラと木漏れ日が差し込む場所もあって、疲れているはずの僕の足も、おじちゃんとホゴタについていけるくらいには動いていた。
「……ふぅ、汗かいたなぁ。ちょっと座ろうよ」
「もうすぐ着くぞ。あの坂を上って、下りるだけだ。あの石が目印でな、あれを見ると、もう着くなぁって」
おじいちゃんが指す左側の崖上には、大人の男の人でも抱えられないくらいの大きな石があった。
地面が小刻みに揺れ始めたのは、その時だった。
「地震……?」
「……来やがったな。
おじいちゃんが、来た道の方を振り返って前傾姿勢になった。まるで敵に対して防御の構えを取るように。
「えっ、な、何が来るの?」
「理久様は私の後ろに。私も戦えるだけの準備はしてきましたが家庭用金槌や家庭用釘抜や中華包丁や出刃包丁やバーベキュー用金串や洗車用ゴムホースしかありません」
「ホゴタ、いつの間にそんなに……って、何あれ!」
ホゴタに気を取られているうちに地震の主はどんどんこちらへ近付き、とうとうその鋭いくちばしがおじいちゃんに届きそうな距離まで来てしまった。見た目は鶏なのにどでかい、未知の鳥だ。
「危ない!」
「
「タダでラーメン……?」
「食えるんだああ!」
そう叫びながらおじいちゃんは、身長の二倍以上ありそうな巨大な鶏に向かって突進していった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます