お題50:道端で拾った石が、私より先に就職した。
とある採用面接にて、私への質問が一通り終わった。緊張が少しほどけたところで、面接官がそういえば、と軽く私に聞いてきた。
「君がさっきから持っている、その石ころは何かな?」
「へ? あっ! これは……形が良くて、なんだか気に入っちゃったんです。なので、緊張を和らげるために握っていました」
「ほう……」
ついやってしまった。何かを拾っては握りっぱなしにしちゃう癖が、大事な場面で出てしまったのだ。彼女は顔が真っ赤になる。
しかし面接官の3人は、そんな彼女ではなく石を熱心に見ていた。
「あ、あの……?」
「おっとすまないね。我々の会社が、建築に使用できる良い素材を求めている事は、知っているだろう?」
「は、はい」
面接官たちは目を合わせて、大きくうなづいた。
「よって、まずはその石を採用することにしよう」
「えっ」
なんと、彼女よりも先に、持っていた石が採用されてしまったのである。
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