お題46:“絶対に押すな”と書かれたボタンを押したら、隣の家の犬がフラメンコを踊り始めた。

 絶対に押すな、と書かれたボタンが自分の部屋に現れたら、皆さんはどうしますか。俺はコンマ秒で押しました。


「……なんだ、なんにも起きないのか。はー退屈だわー」


 学校も行くの面倒だし、何か面白いことが現実に起きないかと望んでいた。そこで出会ったのが、この突如出現したボタンだったのだ。


「せっかく、なんか起きてくれると思ったんだけどなー。世界が爆発しちゃうーとかさ」


 そう誰もいない家の中で独りごちる。一応、庭に犬は飼ってるけど、俺の言葉は通じようもない。


「ん? 何か外から音楽が……?」


 聞きなれない音楽が聞こえ始めたので、庭に行ってみる。そこには、なんとも珍妙な光景が広がっていた。


「あ、愛犬のサンダーが……フラダンスしてる」


 そう、犬が華麗な二足歩行でフラダンスを見事に踊っていたのである。心なしか周囲が輝いているように見える。曲が終わると、サンダーはまだ二足で立ったまま俺の方を見てきた。


「……どうだ、少しは楽しめたか。ご主人」

「お、お前……」


 まさか、俺の退屈をどうにかするために踊ってくれたのか。なんて主人思いなんだ。けど……。


「全っ然パンチが足りねえ。もっと派手なことしてくんなきゃ満足できねえぞ」

「……相変わらず、ご主人は手厳しいのである」


 サンダーのため息は、実は今日が初めてじゃなかったのである。

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