第1話 入学1
私立アルガレシア高等学校。世界三大大国と言われる、ここ『ラグトリア』の私立学校で一番大きい学校だ。そんな学校には全国から志望者が殺到し、その中から各分野でレベルの高い者のみが入学できる。
例えば、保有する魔力が多い者。魔力量は少ないが、魔力を扱う技術が優れている者。単純に得意とする魔法が強力な者など。
ただ単に魔力や、魔法が優れている者だけが選ばれるわけではないことがこの学校の特徴だ。
どんな者にも、資格と入学するチャンスがある……。
それが、この学校の良い所であり人気である所以であろう。
そしてそんな素晴らしい学校に、入学出来た者がここに一人居た。
レンガで造られた雄大な校舎に、気品を感じる大きな門の前に、真新しい制服を着込み緊張からか固まっている一人の青年。
彼の名前は、
特徴的な銀髪、そして入学デビューを決め込んだ、ツーブロックの刈り上げの髪型が似合うやんちゃ系の男である。しかし、そんな彼も蒼色の瞳を不安で曇らせていた。
やはり何事も、初めてのことは非常に緊張するのだろう。
数分経過してようやく最初の一歩を雪灯は、踏み出した。
「え〜新入生の皆様は、誘導の教師の指示に従って式典場に向かって下さい」
誘導の教師……いた。
首から誘導と大きく書かれた板を、ぶら下げていた教師を発見した雪灯は足早に向かった。
教師によると、この先が式典場らしいが……どこだ?
あまりの学校の広さに、雪灯は軽く迷子になっていた。その事実に、額から冷や汗が流れ始めて来た頃、一人の美少女が目に入る。赤みがかった茶髪のポニーテールに、美しい赤色の瞳。少し、身の丈にあっていない制服を見る限り、自分と同じ新入生だろうと考えた。声をかけようかとも思ったが……結局勇気が出ずにやめた。
再び、式典場を探していると人の波を見つけた。その波の先に目的の場所があることを確信し、流れに入っていった。
やはりと言ったところか、あの波の先には目的の場所があり、無事に入学式に間に合う事ができた。
ありふれた入学式を終え、いよいよ己のクラスへ向かうときに見知った顔の男を見つけた。
「ニキ!」
そう呼ぶと、前で歩いていた黒髪黒目でマッシュの男が振り向いた。そして、雪灯の存在を視認した瞬間にパァッと、顔を破顔させた。人当たりの良さそうないい笑顔だった。
「雪灯か!おぉ受験期以来だな!久しぶり」
「あぁほんとだよ。久しぶり!ニキ」
そして二人は両手でハイタッチを交わす。
今、ニキと呼ばれた男……
「今から自分のクラスに行くんだろ?雪灯は何組だった?」
「俺は、B組だな」
その言葉に、ニキはにやりと口角を上げて一枚の紙を雪灯に見せた。そこには、『B組』と書かれていた。
そして二人は、拳を合わせて同じ方向を目指した。
二人がB組の教室に入ると、すでに生徒の大半は来ていたようで各々、雑談をしたり、席につき本を読んでいたり、好きなことをしていた。
雪灯はそんなクラスメイトを眺めていると、ふと見覚えのある生徒を見つけた。先程、迷っているときに見かけた美少女だった。まさか同じクラスとは……非常に運が良い。なんだか楽しくなりそうだな……!
「おい雪灯。なんかにやにやしてるけどどうした?傷つくだろうからぼかして言うけど、キモいぞ?」
「ぼかしてねぇよ。はっきり言ってるよ!ちゃんと傷ついたよ!!いやな?あそこにいる人……」
雪灯は指を指し、ニキに美少女の存在を教える。少女の存在を確認した二季は、目を僅かに見開いた。非常に驚いたような、探し物を見つけたような……そんな表情をしていた。
「どう?驚いたろ、あんなに可愛い子と一緒のクラスなんてラッキーだよな」
「あ、あぁそうだな」
ニキの曖昧な反応に、雪灯は少し疑問を覚える。が、その後の声に意識が切り替わる。
「皆さん全員いますね〜。では、入学初日のオリエンテーションを行います〜」
おっとりとした口調の教師が、いつの間にか教壇に立っていた。肩にかかるほどの長い
「私の名前は、メイ・アリウスです〜。どうぞよろしく~」
優しそうな先生だ。このクラスは大当たりである。
「なぁ!可愛い先生だな!」
ニキのテンションが明らかに上がっているのがわかる。それは俺自身も同様であるが。
先生、クラスメイト、どちらも大当たりの最高のクラスだ。これから先の1年楽しいものになる予感がした。
「それじゃ〜皆さんも察していると思うけど、自己紹介をするわよ〜。はい番号順で行きましょ〜」
その言葉に、前列窓際の生徒が立ち上がる。
「あっ、はい!えーっと僕の名前は、オルク・バークレーです!と、得意魔法は援護魔法です!」
中々良い出だしではないだろうか。可もなく不可もなく。お手本とも言える自己紹介であった。オルク・バークレー……仲良くしてみたいものである。
「一発ギャグやります!!」
……前言撤回、黒歴史確定である。
「『ドッジボールで妄想して当たる人』!」
教室の後方まで、よく聞こえる声でネタを発表するオルク。必死で役に没入し、ボールを避けまくる人を演じ、最終的にはフリスビーとボールを同時に投げられ急所と顔に当たるというオチで締める。
「……」
クラス内全員が死にたくなった瞬間であった。
「はぁ〜い、つまんないネタありがとうございます〜。では次の人〜」
先生……それはないよ!先生ッ!!見てよ!オルクの顔を!!!哀れだよ!!!悲しいよ!!!!
生気の抜けた顔で固まるオルクを無視して、次の者が自己紹介をしだす。
それ以降、特に変わったことはなく順調に自己紹介が進んだ。
ニキの自己紹介が終わり、そして雪灯の自己紹介の番となった。
「あ〜俺か!はいはいっと、えっと……俺の名前は淡原 雪灯だ!てけとーに雪って呼んでくれよな!得意魔法は……冷気魔法だ!みんなよろしっくな!」
雪灯の自己紹介が終わると、とうとう先程の美少女が自己紹介をする番となった。少し楽しみにしていた雪灯は、彼女の自己紹介を傾聴する。
「私の名前は、
おおっ、これぞモテる女子と言うべきだろうか?一瞬でクラス内の立ち位置が決まった瞬間だろう。可愛くて、コミュニケーション能力も高いとは素晴らしい。
そんなことを考えていると、不意に夏風と目が合った。
……こちらを
なぜ俺のことを睨んだのだろうか?なにか……俺は彼女にしたのだろうか……
だが、確実に敵意があった。少し……警戒すべきか?
頭の中で考えるが、結論には至らない。なぜ彼女が、自分に敵意があるのかも分からないし、ましてや初対面の人間。どう接すればいいかも分からない。
「はい〜、ではみんな自己紹介が終わったところで、オリエンテーションを行いたいと思います〜」
雪灯の思考は、先生の言葉で遮られてしまった。
少しの、しこりを残したまま……
次の更新予定
2026年1月2日 20:00 隔日 20:00
敵から拾った刀が生涯最高の相棒になった話 日常さん @nitizyoudaze
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