魔女はオトコノコ! -3/5-

話は戻って体育である。

音夢の通う学校は、内容によって男女混合になったり別になったりする。

初日は体育教師との顔合わせや説明も兼ねているので混合だ。


「という訳だ」


2クラスの生徒がクラス別、男女別に別れて体育座りで教師の説明を聞き終わった。

音夢は勿論男子側にいる。

体操着は男子の物だが、淡い桃色のサラサラヘアーを両端にクルンと纏めた姿は凡そ男子には見えない。

左右前後の生徒は複雑な心境で、教師の話も殆ど入って来なかった。


「それじゃあ今日は交流を兼ねてドッチボールをする。

男子は女子を守れる男になれよー」


ニヤリと含んだ笑いをする男教師。

青春もまた高校生活に必要な要素だ。


「それじゃあ言った通りに別れてね」


説明をした教師とは別の、横でボールを手に持っていた女教師が指示を出した。

女教師は女子側の教師だ。体育教師をするだけあって程よく筋肉のついた良い体をしている。


「えぇっと。真天は守られる側?」


女子が混ざった事で若干の違和感が拭えたが、下を見ればまごう事なき男子である。


「やだなぁ。僕だって女の子達を守れるよ。寧ろボール一個触れさせないよ」


しかしいくら可愛らしくても音夢は男だ。自分でも自分を男と思ってる男だ。

不満気にプクリと膨らまし、プンプン怒って袖に隠れた両手を上げて振って抗議した。


(可愛い)


しかし音夢は可愛かった。

怒ってる姿は逆に可愛かった。

近くにいて音夢の可愛さに被弾した生徒達が、女子より音夢を守ろうと固く誓う位には可愛かった。


「女の子達は安心してね!僕が守るから!」


音夢的に格好良く決めたつもりの決め台詞まで可愛かった。


「あー。音夢は魔法使うなよー」


そこに掛かる男教師のジト目。口はニヤついているのでワザと煽っているだけだ。というよりいじって遊んでるだけだ。


「そんな卑怯な事しないですよ!」


音夢は男教師の内心に気付いているのかいないのか。心外なっ。と、片袖は口に、もう片方の袖で抗議の為に上へと高く上げた。


「「「可愛い」」」


最早音夢の性別など些細なものに感じた。今日の良き体育の日。

生徒達は男子も女子も音夢にメロメロだった。

女子と並んでも低い方の背もあって、この場の殆どの生徒達にとって、最重要保護対象に認識された瞬間でもあった。


「っけ。男の癖にキモいんだよ」


勿論反発を抱く者もいる。

しかし保護対象者を前にした女子達を前に、異論を唱えようものなら、


「「「あ゛?」」」


「ひえっ」


血を見る覚悟はした方が良い。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る