魔女はオトコノコ! -2/5-
入学式から今日のこの日まで、ほんの数日。体育の授業はこの日が初めてだった。
「ほ、ホントに男だった……」
げんなりして青褪める男子生徒。
「ちょっと良いなって思ってたのに……!」
悔しげに握り締めた拳を体育館の床に叩きつけた男子生徒。
「こんなに可愛いのに」
「男子の体操服をここまで可愛く着こなす美少女なのに」
「「「本当に男の子なんだー」」」
成長を見込んで大きめに発注した体操服。
大き過ぎて小さく華奢な手は隠れてしまっている。
「でも体操服は男子用なんだね。何で?」
「体操服の違いは色だけたから」
問われて答える音夢。
改めて男女の体操服を見比べても、確かに色しか違いは見当たらなかった。
厳密に言えば多少の差異はあるものの、誤差範囲内だ。
「真天さんって魔女なのよね。女の子の格好が良いなら魔法で女の子になれば良いんじゃない?」
尤もな疑問である。
「僕は女の子になりたい訳じゃないよ?魔女にはなりたかったから頑張ったけど」
魔女。
その字の通り、魔法を使う女。
しかし音夢の性別は男だった。
本来なら魔女にはなれない。
そもそも魔女は血で継承される。
なのに音夢は魔女だった。
正確には13歳で独り立ちし、修行を重ね途中の初心者魔女だ。
何故男のはずの音夢がなれたかというと、先ずは本人のなりたい意思。
そして何故か継承された魔女の血。歴史的に見ても滅多にない珍事だった。
そしてさらに魔女は歴史的に有名な魔女狩りにより、その個体数を激減してしまったのだ。
この時魔女界は考えた。
このままでは魔女が絶滅すると。
そして古い魔女達は同胞を守る為に、地球全土に認識阻害魔法を展開した。
これによりご近所さん以外の人は、魔女を忘れ易くなった。
しかしそれだけだと弱い。
ならば才能ある子はみんな魔女にしちゃえば可能性の輪が広がるんじゃない?
誰かが適当に出した声に、しかし魔女界の重鎮達は震撼した。
曰く、
「「「その手があったか!」」」
と。
こうして男の子で有りながら、男の娘となった魔女音夢が爆誕したのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます