第7話

焼き焦げた煙を吸い続け

林の中を止まることなく走り続け

喉が干上がり焼けつきている

足は気づかぬ内に少しずつ速度を落とし

それとは真逆の軽やかな馬の駆け足が振動として響き

その距離を徐々に縮め続ける

そして火柱の光からはどんどんと遠くなってゆく一方で

兵士の照らす小さな灯りだけが細く揺れていた


もう少しもう少しだけ村から引き離さなければ

それだけの思いで黒く深く生い茂る草原を

チリチリと切りつけられながら

駆け抜けていると


「オーパル!こっちはあの村とは真逆だぞ!」

木陰から飛び出たのはシャリフだった

どうしてここにという言葉を飲み込み

そして一緒に走ってと願ったわけでもないのに

シャリフはその後をひた走る


「あと、もう少し」

カラカラに枯れた声でそれだけ言うと

オーパルはこっちよとシャリフの手を掴んだ

並走しながら大丈夫と笑いかける


「ほとんどの村人は無事だ

もう君もあの村に避難してると思ってのに」


息を切らせながら二人が走りついた先は崖の先端だった

崖の端は空に繋がっているだけ

崖下には夏の暑さに干上がった砂混じりの地面があるだけ

そんな絶望の崖に

小さな地面の振動が遂には

騎乗の兵士という実在を伴って現れた


「こっちに手間かけさせるナ

べっぴん姫さんよ」


オーパルはシャリフの手を握ったまま

更に数歩後ずさりした

後二歩も後退すれば、文字通りそこには何もない崖

シャリフの手が汗にまみれる


灯りの乏しい中

オーパルはきっとシャリフへと顔を向ける


「私を信じて」


「君を信じるよ」


ふっと笑ったかと思うと

オーパルはシャリフと共に

崖からそのまま飛び降りた

ぽかんと口を開けたままの兵士をそこに残して
















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