第6話
考えるより先に足が全力で走り出していた
その間にも乗馬の兵士は
長老の行く手をまるで嘲るかのように
ぐるぐると回っている
幾度目かに
逃げ道を阻まれ足が縺れ体勢を崩した老女は地面に倒れた
そこへ兵士が下卑た言葉を投げつけている
その言語は父と同じもの
でも何と醜い音なのだろうとオーパルは思った
「待って、その人を見逃して」
息を切らしながら祖母の前に回り込んだオーパルは
両腕を目いっぱい広げ
祖母を庇うように立ち尽くす
そしてこっそり小声で
今のうちに逃げて私もすぐに追うからと祖母へ部族の言葉で告げた
そんなことが出来るかという言葉とためらう気配に
おばあちゃんにはまだやることが沢山残ってる
大丈夫私には幸運の精霊がついている
だから早くと矢継ぎ早の言葉
すまぬ、オーパルという声と重い足音が背後で聞こえた
「私はアヴィラクス王国フィルスタインバーグ家の第一王女
オーパル ネケニ フィルスタインバーグ
私を人質にとって身代金でも取ればいいわ」
ぱっと新たな火の手が上がりその場を照らすと
兵士は絶句した
太陽のような輝きを放って止まない翠の瞳と
豊かで柔らかな赤毛
すらりと鹿のように伸びた四肢
そこだけが闇から切り出されたかのようなまぶしさ
オーパルは父から与えられた指輪を兵士の目前へ翳す
「疑ってるの?どうしてこんなところにって?
見て、これがフィルスタインバーグ家の証し」
そう片腕を上げてみせた姿は
神々しさがあふれ出るようにこんこんと湧き出ていた
「何と・・・」
それだけ言った後に兵士は硬直した
「あらそう私は必要ないみたいね
それじゃさよなら」
祖母の姿が見えなくなったのを確認し
オパールはそのまま数歩後ずさると踵を返し
一目散に走りぬけた
大丈夫、私は幸運の娘
だから大丈夫と言い聞かせるその後ろからは
馬の蹄が残酷に近づいてきた
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