第2話 会話
うちの大学は偏差値や就職先など世間的評価はそこそこだが、特段特筆すべき特徴はない。が、俺的には図書館の所蔵数と開館時間のポイントが高かった。多分、利用しない人には1ミリも共感してもらえないんだろうけど。
館内で大学のFreeWi-Fiは使えるし、開館時間は平日で夜の9時まで。土曜日だって7時まで開館は充実していると言って間違いない部類だと思う。お陰で課題や調べ物はギガも時間も気にする事なく進められるし、利用者数は多い方だと思う。弊害として、相席になりがちなくらいには。
「シーバ、まだやってくの?」
「もう少しでキリのいいとこまでいくしね。アオイとヒサキはもう帰る?」
「うん。私、この後バイトあるし。ヒサキも帰るでしょ?」
「そうね、私も提出期限近い課題は全部終わらせたし、今日は帰るわ」
一年(の一部)の間では有名な女子達が小声で挨拶を交わすのを横目に、座席を探していた俺は小さく息を吐いた。
途中報告的な課題が多くの授業で出されているからか、いつにも増して今日の図書館は学生が多く相席が避けられそうにない。しかも、今日に限って一瞥して分かるほど男女比に差があった。
『仕方ない、か』
妥協して「っす……」と何か挨拶的なものに取れそうな音を小さく発しながら、シーバと呼ばれていた女生徒の斜め向かいの椅子を引いた。他の男子の取り巻きをしている彼女の方が俺に興味を持たない分、よく知らない女子が座るテーブルに座って変に騒がれたり視線を感じながら勉強するよりはマシなはずだ。
案の定、向かいの彼女はきちんと手入れされた真っ黒なボブを揺らして同じく申し訳程度の会釈が返しただけで、自分の課題に意識を戻していった。
でも狙った通りでありがたい反応のはずのそれが、あまりにも素っ気なさ過ぎて俺はかえって気になった。
きっと染めたことなどないのだろう髪。きちんと整えられてはいるが、パーマやカールなどはされていない。資料を読み込むために伏せた眼もまつ毛こそ長いが、人工的な色はほとんど感じられない。さっぱりとまとめられた服装から考えても、きっとあまりオシャレに重きを置いてはいないのだろうと想像できた。
だからこそ「なぜ?」と思うのだ。なぜ、ハーレムの一員なんかやっているのか。そして、
「なんで、あんなこと言った?」
「……え?」
俺の声に反応して顔を上げた彼女が、髪と同じく真っ黒な瞳をまん丸にしてこちらを見つめているのを見て初めて自分が疑問を口に出してしまっていたことに気付いた。
でも一度発した言葉は戻っては来てくれないから。もう一度問いかける。あれからずっと気になっていた、あの時の言葉の意味を知りたくて。
「なんで、あんなこと言った?」
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両片想いを自覚するなんて至難の業だから、僕らはいつも恋に惑う @Katsukisaya
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