情緒不安定な少女と、どこか怪しげな美青年。

物語を通して、読者は終始この青年の言動に違和感を抱かざるを得ません。

その不穏な空気は物語が進むにつれて次第に色濃くなっていき、終盤には「この男は決して善人ではない」という確信へと変わります。彼が少女に対して本当は何を望んでいたのかは明言されませんが、家出を促し、「どこか遠くへ逃げよう」と誘う行為が、決して純粋な善意ではないことは明白です。

本作は、経験の浅い若き少女の葛藤と思考プロセス、そして決断を実に見事に描き出しています。最終的に彼女は、甘い誘惑の中に潜む不気味な「救世主」に縋るのではなく、自らの足で現実に戻り、困難に立ち向かう道を選びました。