知性知的のこり8
かく。
まだかける。
かけるうちにかく。
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あたまが、けずられている。
ざりざり。ざりざり。
止まらない。
何日も止まらない。
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名は……。
田中……。
田中こう……。
こう、すけ。
そうだ。田中こうすけだ。
わすれるな。
わすれたら、おわりだ。
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夜がつづく。
空に月がない。
空にほしがない。
空に、目がある。
大きな目。
白く光る目。
見ている。
ずっと見ている。
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水のゆめを見た。
くろい水の中にいた。
目があった。
千の目。万の目。
体がうごかなかった。
手も足も、うごかなかった。
ただ、見ていた。
見られていた。
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声がする。
「……ビガンゴ……」
あたまがいたい。
声がするとあたまがいたい。
けずられる。
もっとけずられる。
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かべしかない。
どこを見てもかべ。
出口がない。
もう出られない。
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怖い。
怖い。
怖い。
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体が冷たい。
手が冷たい。
心も冷たい。
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何かがなくなっていく。
わたしの中の何かが。
けずられて、なくなっていく。
もう何がなくなったか分からない。
でも、少なくなっている。
わたしが、少なくなっている。
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目。
目が近い。
天井に目がある。
いや、天井が目だ。
見ている。
わたしを見ている。
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かく。
まだかく。
かけるうちは、わたしだ。
かけなくなったら——
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ざりざりざりざりざりざり
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