第3話 こまり、ねこにのる
おひるねからめをさますと アイシャがケージのまえのでまどで ひなたぼっこをしていた。
「あら、おめざめ?」
アイシャも はんぶんねていたらしく ふぁああとあくびをひとつ。
「どうしたの、こまり。あたしのことを じっとみて。」
……なんだか アイシャのせなかが とてもあたたかそうだ。ぽかぽかの おかみたい。
「きみのせなか きもちよさそうだね。」
「きょうは とてもきぶんがいいわ。おひさまが ちょうどいいの。……そうね、きぶんがいいついでに ちょっとあそんであげるわ。」
アイシャはトン、としずかにゆかにおりると ぼくのケージのとびらを きようにあけた。
「けいたくんに だっそうしたってばれたら おこられちゃうよ。」
「あら、いくじなしね。あたしのせなか、のってみたくないの?」
アイシャはぼくのまえにうずくまって しっぽをふりふりさせた。おひさまの いいにおいがする。
「うーん……のってみたい。」
「じゃあ きまりね。あたしのきがかわらないうちに はやくおのりなさい。」
ぼくはゆうきをだして ケージからおそとにでると アイシャのせなかに とびのった!
「わあ……! ふかふかで、あったかーい!」
ケージのまえの すがたみをみると アイシャのおおきなせなかに ちょこんとのる ぼく。ちょっと ドキドキしてる。おひさまのにおいを はないっぱいにすいこむと とってもここちよかった。またねちゃいそうだ。
「さあ、いくわよ。」
「いくって どこへ……あわわ!」
アイシャはよつあしでたちあがると すたすたとあるきはじめた。アイシャのせなかも そのうえのぼくも ぐらぐらとゆれる。
「わ、わ、わー! おちちゃうよ!」
「さわがしいわね。あたしのことを しんじてるなら おとさないであげるわ。」
ぼくは アイシャのせなかをよじのぼって あたまのうえにのった。なんどかすわりなおして おさまりのいいばしょをみつける。
「わあ、すごい……せかいが したにみえる!」
ぼくのことばに アイシャがわらった。
「そうね。こまりはちいさいから せかいをみあげるばかりだったのね。」
「ぜんぜん ぼくのみてるせかいと ちがう!」
けいたくんが だしっぱなしにしたえほんも おえかきしてるとちゅうのがようしも いつもとちがってみえた。
「ふふ。」
「なに わらってるのよ。」
「ぼくとアイシャだけの ひみつだね。」
「はずかしいこと いわないでちょうだい。」
ぽかっと アイシャのあたまが あったかくなる。てれてるのかなあ。
「きみ、やさしかったんだね。」
「しつれいね。あたしは いつだってやさしいわよ。」
アイシャは じしんたっぷりに のしのしへやをあるいてまわる。ゆれるせかいが おもしろかった。
「あらアイシャ。きょうは ごゆうじんをつれているの?」
まどべにあおいとりがやってきて ぴいぴいはなしかけてきた。
「アイシャのともだち?」
「ええ、そうよ。きれいなあおいはねを しているでしょう。かのじょ、とっても おしゃれで うわさずきなの。」
「ぼくのなまえはこまりです。よろしくね。」
ぼくがわらいかけると とりはおおごえをだして なかまをよんだ。
「みんな! アイシャが かわったこをつれているわ! ちいさいねずみよ!」
「ぼっ、ぼくはハムスターだよ。」
ぼくがいいかえしていると とたんにあおいとりたちが あつまってきた。
「わあ、ほんとうだわ! ちゃいろい ねずみ!」
「こまりくんっていうんですって。」
「アイシャのともだち?」
「あなた、そらはとべる?」
「いつから このおうちにいるの?」
とりたちのおしゃべりのかぜに ぼくはふきとばされそうになった。
「わ、わ、いっぱいきた……それに ぼくはねずみじゃないよ、ハムスターだよ。」
とりたちは きれいなこえでなきながら ぼくとアイシャをとりかこんだ。ぼくのこえは とどいているのかな。
「ハムスター? なにかしら。だれかしってる?」
「しらないわ。」
「でも とってもかわいい。よろしくね、こまりくん。」
とりたちは ぼくたちのあたまのうえを ぐるぐるとびまわると そとにでていった。
「……なんだか つかれちゃった。」
「かのじょたちは おしゃべりが だいすきだからね。こまり、もう もどる?」
もうちょっと あそんでいたかったけど つかれてくたくただった。
「うん、きょうは ありがとう。」
「どういたしまして。」
「それにしても、みるばしょかかわると せかいってちがってみえるんだなあ。」
「そうね。みんな じぶんのめのたかさでしか せかいをみないのよ。」
そうこたえるアイシャは いつもいじょうに おとなびてみえた。
ぼくはいままで ぼくのめせんでしか せかいをみられなかった。こんなせかいがあるなんて きょうはじめてしったんだ。すこしだけ おとなになれたかも。ぼくのちいさなあしでも もっととおくにいけるのかな?
「こまり、こんどは あのとりたちのたかさで せかいがみたい?」
「うーん、たのしそうだけど、まだちょっとこわいや。」
「アンタがそのきになったら あたしからたのんであげる。ほら、ケージにおもどり。」
アイシャはぼくをゆかにおろし ケージのとびらをあけてくれた。
「きょうは ほんとうにありかとう、アイシャ。」
「あたしも まあまあたのしかったわ。」
アイシャは みみをうしろあしで かいている。みていたら ぼくもからだがかゆくなって すなばにころがった。
「こまりー、おやつのじかんだよ!」
そこへ けいたくんがはいってきた。よかった、だっそうがばれなかった。
「こまり、ぼくきょうは おかあさんに 『こまりのおせわのおれい』だって シールをかってもらったんだ! だから いつもよりながく さわってもいい?」
「…………!」
ふいに けいたくんがきらきらしためで ぼくをむりやり もちあげる。けいたくんはこどもだから まだちからかげんが わからないらしい。きゅうにういたからだで ぼくはけいたくんに かみついた。
「ガブッ!」
「いたい! ごめんねこまりー!」
……アイシャのめのたかさは たのしかったけど けいたくんのたかさは まだこわいな。
ぼくのなまえはこまりです 四十住沓(あいずみ くつ) @Solaris_aizm
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