第26話 輝く太陽
■2-13:輝く太陽
エルドガルドへ向かう馬車の車輪が、乾いた大地をゆっくりと叩いていた。
街の喧騒や宴の声はもう遠い。
代わりに、草原を渡る風と蹄の音だけが響いている。
アレルは馬を引きながら、後ろに座る小さな影にそっと声をかけた。
「……そういえば、まだ聞いてなかったな。
お前の名前は?」
玄太は、わずかに肩を震わせた。
だが何も言わない。
エルフの子どもは一瞬だけ玄太を見上げ、それからアレルに向き直る。
玄太は言う。
「ショックな事あったみたいでさ、声なかなか出せねぇんだよ。」
アレルは困ったような顔をする。
「じゃあよ……名前がなければ、俺が考えてもいいか?」
こくり。
可憐で、森の子らしい響き――
「……ララノア。
その名前、どうだ?」
エルフの子はふわりと微笑み、深く頷いた。
玄太は満足げに微笑む――
アレルは訝しげに言う。
「なんか……女の子みたいな名前だな」
テスが呆れたように振り返った。
「女の子じゃぞ?」
「……は?」
アレルは驚きすぎて手綱を引っ張り、馬が身をよじる。
「おい!馬車ごと転がす気か馬鹿!」
玄太が喉から絞り出すように突っ込む。
「ちゃんと前見て馬引け」
「す、すまん…!!」
ララノアは袖で口元を押さえ、くすっと笑った。
◆
アレルは話題を変えるように玄太を振り返った。
「なあゲンタ。
お前のスキル……《運命の天秤》だっけ。あれって役に立ってんのか?」
玄太は少しだけ考えてから、淡々と答える。
「テストは大体出来た。
後は使い所だ。」
玄太は呟く。
「エルドガルドの旅路、良好に過ごせるか?」
---はい
アレルとテスは軽く笑いながら微笑む。
「じゃあ…この結果も信じていいんだな??」
玄太は空を見ながら短く言う。
「――エルドガルドまではな。
良い旅路になるみたいだから安心しろ」
アレルは首を傾げた。
「なんか引っかかる言い方だな」
「気にするな」
「いや気になるだろ」
「気にするな」
それ以上は何も言わない玄太。
テスは尻尾を揺らし、笑っているのか笑っていないのかわからない表情で馬車の後ろを歩く。
そしてララノアは――玄太の袖を握りながら、どこか不思議な安心感に包まれたように、
遠い森の方角を見つめていた。
馬車は進む。まぶしく輝く太陽と共に---
---
ばっどえんど を ぶちこわせ あいこ @ohg_aiko
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