第20話 クソでかレベルアップ!



■2-7: クソでかレベルアップ!


銀の影が走り、針が閃き、金属音が爆ぜる。


――ドシュッ!!


「うおおおおおおおっ!! 当たったああああ!!」


金属状の蝿が光の粒子となって弾け飛ぶ。


数秒後、アレルの身体が金色に輝いた。


レベルアップ。


「はっ……はっ……! 見たか!? 見たか今の!!?」


カザドが腕を組みながら呆れたように笑う。


「正気かお前、あんな高速の相手に急所を刺すとは……!」


「いや普通は無理じゃぞ……? まさに豪運……」


だが――ここで終わらなかった。


柱の影から、また1匹。

さらに1匹。

次は空中から、羽音を立てて。


メタル・フライ。

メタル・スネイル。

メタル・ラット。


アレルは完全に覚醒していた。


「逃がすかぁぁぁあああ!!」


――ドスッ! パァァン!


「よしッ!」 「っしゃああッ!!」


悲鳴とも雄叫びともつかない声を上げながら、針を振るい続ける。


その後ろ、結界内では――


玄太が湯を沸かしながら言った。


「お茶にしよーぜ」


カザドは湯呑みを受け取りながら小さく笑う。


「なんか……この数時間だけでワシも強くなってないか?」


カザドも腕をぶんぶん回しながら首を傾げる。


「筋肉が膨れておる気がする! 技も冴えておる! 何か覚えた気すらする!」


玄太は軽く指を立てて答える。


「パーティー組んでっから経験値共有なんだよ」


テスはすぐに理解し、クスクス笑う。


「なるほど、そういうことか」


だがカザドの頭は追いついていない。


「共有……? レベ……? その、どういう理屈じゃ……?」


玄太は茶をすすり、涼しい顔で言い放つ。


「理屈とか知らん。……『そういう仕様』だ」


テスが堪えきれず吹き出す。


そのとき、アレルの叫び声が結界の外から響いた。


「あとッ! あとどれだけ倒せばいい!?!?」


玄太は即答した。


「後、半日は最低やろう」


アレルが振り向いた。


その顔――汗でぐしゃぐしゃ、目はギラつき、もう理性など残っていない。


玄太が楽しそうにニヤリと笑う。


「やれよ。お前の運、見せてみろ」


アレルは喉を震わせ、狂気にも似た笑みで叫んだ。


「やればいいんだろ!! やればぁああああ!!!!」


再び銀光を追って駆け出す。


針を握り、豪運の化け物の如く。


千柱の間に、金属音とアレルの雄叫びが響き続けた――。



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