第18話 戦士の神殿



■2-5: 戦士の神殿


夜が明け、空気は冷たいのに空気は熱い。

国中のドワーフが見送りに集まっていた。


「必ず戻ってこいよ!!」

「カザド様! 伝説をもう一度!」

「人間も黒猫も、気をつけてな!」


玄太は手を振り、アレルとテスは軽く会釈し、

カザドは照れ隠しのように鼻を鳴らした。


そして、馬車を降りて徒歩で向かう。

荒野を抜け、山肌を登り、時折現れる魔物――


ドンッ! ガッ!


現れる度に、アレルが斬り伏せ、テスが蹴り飛ばす。

玄太とカザドはほぼノーダメージで歩き続ける。


そんな中で、玄太がふと口を開いた。


「カザド。とりあえず俺とパーティー組んどけ」


「ん? 別に構わんが、どうやって――」


「はい、でいい」


「……はい?」


ピコンッ。


玄太とカザドの頭の中に電子音のような効果音が響いた。


「これでいい。今、完全に繋がった」


「……仕様がわからんが、害はないんじゃろ?」


「あったとしても二日酔いよりはマシな程度さ」


笑いながら歩みを続けると、視界の先に巨大な石造りの建物が現れた。


――“戦士の神殿”。


入口には階段が続き、地面には無数の戦いの跡が残されている。


玄太の顔が引き締まる。


「中には“実体のない鎧の戦士”が山ほどいる。  

倒しても鎧はダンジョンに吸われて消える。時間が経てばまた復活する」


アレルが眉をひそめる。


「じゃあどう倒せって言うんだ?」


玄太は指を一本立てた。


「足だ。足だけ切断しろ。歩けなくさせればそれでいい。  

『殺す』必要はない――『動けなくさせる』だけで突破できる」


玄太はさらに踏み込む。


「それともう一つ。カザド」


「なんじゃ」


「奥の“祭壇手前”、柱が大量に立ってる場所、わかるか?」


カザドの顔が一瞬だけ強張る。


「……“千柱の間”か?」


「そこまで案内しろ。そこからが本番だ」


玄太は笑っているのに、声は冷たかった。




--テスとアレルは気づく。


音もなく、無数のリビングアーマーが姿を現した。


玄太は剣を抜くでも、構えるでもなくただ言った。


「行くぞ。もう勝ってんだから、あとは歩くだけだ」


戦士の神殿の闇へ、四人は足を踏み入れた。



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