第17話 ぐたらない ストーリー



■2-4: ぐたらない ストーリー


宿の部屋。 玄太がベッドに横になった瞬間、テスがぴょんと腹の上に飛び乗る。


「……楽しそうで何より、だな」


「ハッハァ、テスはもうなんか俺のこと全部知ってる気がすんだよな」


テスはじっと玄太を見つめる。 そしてぽつりと言った。


「落ち人じゃろ?」


玄太の手が止まった。


「落ち人……?」


「こことは別の世界から来た者のことじゃ。  

だから面白そうだとついてきた。

わかるじゃろ?じゃが他の人には言うなよ」


しばし沈黙。 玄太は天井を見たまま、ゆっくり口を開く。


「……この世界はな、バッドエンド製造機、【アポカリプス】のシナリオの中なんだ」


今日のドワーフの襲撃。 あれは本来、第一幕に過ぎない。


「後々、貴族どもが軍を引いてドワーフ大虐殺しに来る流れだった」


拳を握る玄太。


「俺のスキルは“はい”か“いいえ”しかわからねぇ。  でも使い方次第で──負けやしねぇ。

図書館に籠ってる間もこのイベント回避を考えていた。質問一日一回はきついぜ…。」



玄太は横目でテスを見る。


「な、テスカ──」


その言葉を言い終える前に、 テスは玄太の口を右手でそっと塞いだ。


「それ以上言わんでいい。  わかっておるなら、それでいい」


玄太の目をまっすぐ見る。


「お前もククルカの主、ひっくり返す最高のストーリー、必要だろ?」


玄太は小さく笑い、そして大きく笑いに変える。


「なら──最高の大逆転ストーリー作ってやるよ」


テスも腹の底から笑って応える。


「ワーッハッハッハ!」

「ヒャッハッハッハー!」


二人の笑い声が深夜の宿に響く。


そして──夜は明けた。



---

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る