第16話 ドワーフのくにへ ようこそ

■3-3: ドワーフの くにへ ようこそ


ドッカの城門は、黒鉄の壁のように巨大だった。

だが、そこに近づいた途端、門兵たちの反応は一変した。


「カ、カザド様!? 本当に……本当にご帰還か!」


門兵二人が同時に姿勢を正し、すぐさま門を開かせた。

馬車はまるで空気のように通される。


玄太は荷台でぼそっと呟く。


「…王都キングダムより入りやすいの草w」


アレルは目を細めた。


「カザドって……そんなに有名なのか?」


「“伝説級”じゃぞ」


テスは串を口に運びながら、当然と言わんばかりに言った。

「彼が打った物には魂が宿るとまで語られておる、

まさか王都のあんなとこにいるとは知らんかったがな」


カザド本人はというと、驚かれるのにも慣れているのか、ただ黙って手綱を握り続けた。



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街に入ると、驚きはさらに広がった。


鍛冶工房と言えばこの国の中心産業だが

カザドが姿を見せた途端、工房の主たちが雪崩のように押し寄せてきた。


「カザド様ァ!戻られたのか!」

「いつ打つ!?何を打つ!?見学させてくれ!」

「弟子入りを!弟子入りを頼む!!」


カザドは肩をすくめただけだった。


「落ち着け。今は客人がおる。もてなしが先じゃ」


その一言で、街全体が静まる。

完全に“格”が違った。



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宿に着くと、対応はさらに早かった。


「カザド様御一同!最上の部屋を確保しております!」

「風呂も湯も食事もすべてご用意いたします!」


王族の泊まりそうな大部屋を一瞬で確保。

普通の旅では考えられない速度だった。



「ダンジョン攻略も王からの許可が出ております!」

ドワーフは言う。


アレルはぽかんと口を開けたまま。


「……いや待て、早すぎじゃないか?

 国境・城門・宿・ダンジョン攻略の王の許可まで、半日で全部って……」


玄太はベッドに倒れ込みながら鼻で笑う。


「人気キャラと一緒に行動すると、シナリオぶっ壊れるんだな。RTA仕様だろこれ」


テスはニヤニヤしながら補足する。


「明日より“戦士の神殿”へ向かう。

 王からの許可もすでに下りておる。つつがなく、のう?」


アレルは頭を抱えた。


「……全部順調すぎて逆に怖いのだが…」


玄太は腕を頭の下に組んで言った。


「だから今日は寝ろ。好調の時ほど寝とけ。

 明日の朝、全て動き出す」


その声音は、いつもの飄々とした調子ではなかった。

本当に戦いが始まることを知っている者の声だった。


灯りが落ちていく宿の一室。

外ではドワーフ達の祝いの歌声が響く。


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