第15話 伝説級だってさ
■2-2:伝説級だってさ
玄太の言葉から、ほんの数時間後だった。
怒号が響く。土煙が立つ。
想像した通り――いや、予告された通りの現場だった。
ドワーフ達が武器を手に、人間の貴族達を囲んでいる。
武力差ではドワーフの方が弱いはずなのに、憎悪が空気を焦がしていた。
アレルは真っ先に前へ出た。
「落ち着け! 殺したら国同士の問題になる!
そいつらは自国に戻す! それでいいだろ!」
貴族側にも鋭い視線を向ける。
「お前らも聞け。反省しないなら次は命はない。
ここは戦場じゃない。帰れ。二度とドワーフに手を出すな」
アレルの声は低く、威圧感に満ちていた。
その場の全員が息を呑み、動きが止まる。
ドワーフの一団の中、年配の戦士がアレルの横に歩み寄り、唸る。
「……正論じゃ。ワシらは殺しはせん。
だが、道具扱いされ続けた怒りは忘れん!」
ドワーフ達は貴族の馬車を蹴り飛ばし退却を促す。
貴族達は顔面蒼白で去っていった。
ひとまず争いは終わった。しかし空気は刺すように重い。
その時だった。
ドワーフ集団の後方にいた一人が目を見開き、震えた声をあげる。
「――カザド様ッ!!」
カザドは手綱を置き、ゆっくり馬車から降りてくる。
さっきまで酒を煽っていた男とはまるで別人だ。
静かで、厳かで、圧倒的だった。
ドワーフ達の歓声が爆ぜる。
「カザド様だ!」 「戻ってこられたのか!」 「伝説の鍛冶師だ!」
玄太は腕を組み、にやりと笑う。
――予定通り。 運命は示していた通り。
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